大量生産から高品質の酒へ!
大改革で得たみずみずしい美酒
北西酒造の初代、北西亀吉さんは中山道沿いの旧上尾宿という立地と、秩父からの良い水が潤沢に湧く上尾にほれ込み創業。
酒銘は人形浄瑠璃好きから「文楽」とし、義太夫、三味線、人形遣いで成り立つ文楽と、米、米麹、水から成る日本酒を重ね合わせた。
最盛期は4000石を醸造し、県内最大の製造量を誇った。だが日本酒の消費量が減少し、兼業の業務卸も不振が続き苦戦する。
5代目の隆一郎さんは、大学で金融工学を学び金融系の会社に就職。海外駐在するなど酒蔵を継ぐ気はなかった。
ある日、父から経営の相談を受け、改革を求められた。厳しい状況しかなかったが、意を決して2015年に入社。まず本業以外の事業を整理し、少量仕込みの高品質酒へと改革に乗り出す。
救いは杜氏の村上大介さんの存在だ。
7年連続、全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、技術は高いが大量生産の市販酒では実力が出なかった。
隆一郎さんは「文楽」は残し、新しい酒に挑むため、ありとあらゆる酒を飲み、高品質の酒蔵を訪問。そして、大量生産型の設備を全て入れ替え、フレッシュな酒を目指し、搾り室を冷蔵化。壁はステンレスに替え衛生的な環境を整えた。
構想から5年、試験醸造を繰り返すと、みずみずしく果実感ある美酒に。
彩の国から来た酒で「彩來(さら)」と命名。
県外からも注文が増えた。蔵に売店、そば店を併設し、蔵見学を受け入れ、消費者に寄り添う酒を心掛ける。
地元素材の酒「AGEO」にも挑み、上尾の地酒を問い直す。
●北西酒造・埼玉県上尾市上町2-5-5●代表銘柄:彩來 純米吟醸、AGEO 生酛純米大吟醸、文楽 生酛純米●杜氏:村上大介●主要な米の品種:山田錦、雄町、五百万石、彩のかがやき