今年度で都区部での「無条件での学校選択制」は事実上全て廃止となる。この制度は最初から実質的に機能しそうになかった。受け入れ人数には限界がある上、人気校は倍率が高くなるだけなので、必然の結果ではある。そんな中、子どもの教育環境と家選びをどうすべきか、現実に即して考え直さなければならない。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
小学校の学校選択制は有名無実に
小学校の学校選択制は続々と廃止になっている。杉並区・葛飾区は2016年度から、新宿区は2018年度から、渋谷区は2022年度から、学校選択制を廃止とした。こうして過半数の13区は制度自体が存在しなくなった。残る10区でも隣接区域に限定する区が7区、距離や徒歩時間の制限がある区が2区、残る1区は特認校という施設に余裕のある学校指定となっている。
選択制が残る江東区でも豊洲エリアの小学校は全て選択不可であるように、人気校はそもそも受け入れ人数がゼロになったり、非常に高い抽選倍率になったりするので、入学はほぼノーチャンスということになる。
こうして、学校選択制は有名無実になっている。学区域に引っ越さないと希望の公立小学校に入ることはできないのは、以前から変わらないのである。小学校選びに注目する親の多くが、子どもを中学受験させている。中高一貫の私立・国立の中学校を目指しており、その意味で小学校選択は重要なのだ。
認可保育園も入りやすさが駅によって違う
小学校の話題に入る前に、保育園についても駅によって入りやすさが雲泥の差になるので、触れておこう。都区部においては、小学校入学前の児童の約50%が保育園に入園する。スタイルアクトの調査によると、認可保育園に入れる確率は平均して57%で、行政発表の待機児童ゼロとは程遠い現状にある。それを区と駅単位に細分化して入園しやすさを数値化したコラムは『東京23区「保育園に入りにくい駅」ランキング2021』で書いた。保育園に通わせるなら、同じ駅の同じ出口であってほしいが、ここでも子どものために、居住地を考えなければならない。認可保育園と公立小学校を想定した引っ越しを検討するためには情報が必要になる。不動産のセールストークに「○○小学校学区域内」とうたう広告が多いのは実際に効果的なのである。こうした目的の転居は「公立小移民」と呼ばれ、NHKの「クローズアップ現代+」でもこのデータが取り上げられたほどだ。
公立小学校の教育レベルの推し量り方
2月1日は第一志望の私立中学校の受験日となることが多い。この日、受験生は小学校には登校しない。登校児童数が少ないことがその小学校の学力レベルを表すと言われることもある。しかし、その児童の学力に親の経済力が影響している場合も少なくない。教育にかける資金と時間が、偏差値を押し上げるからだ。
このため、2月1日は受験を装って登校しない児童がいることもあり、親子のさまざまな思惑が交錯する。ナーバスな問題ではあるが、批判を恐れず、判断材料の一つとして学区別世帯年収を開示して、役立てていただこうと思う。