わが子にピッタリ!塾・予備校&家庭教師・オンライン教材選び#22Photo:PIXTA

日本の現代のエリート教育の王道は「公文→サピックス→鉄緑会」という「塾歴」にあるといわれる。特集『わが子にピッタリ!塾・予備校&家庭教師・オンライン教材選び』(全22回)の最終回では、この塾頼みの教育状況は、「もろ刃の剣であり、『教育法にも正解があるに違いない』という幻想を抱く親世代の『正解主義』が根底にある」と言う教育ジャーナリスト、おおたとしまさ氏が「塾歴社会」の危うさを説く。

東大理Ⅲ合格者の半数以上は
一つの塾から生まれている

写真:おおたとしまさ氏おおた・としまさ/1973年生まれ。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学中退。上智大学卒業。リクルートを脱サラ独立後、育児・教育をテーマに取材・執筆・講演・メディア出演などを行う。『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス』(祥伝社)など著書60冊以上。

 日本の学校制度における最難関・最高峰の入試は、東京大学の理科三類(医学部系。以下、理Ⅲ)だといって差し支えないだろう。

「河合塾 医進塾」が発表する2021年入試のボーダー偏差値によれば、東大理Ⅲの偏差値は72.5。東大のその他の類の偏差値は全て67.5であるから、理Ⅲは頭一つ抜けている。東大入試の合格者は毎年3000人強。そのうち理Ⅲの定員はたったの100人の狭き門だ。まさに大学受験界のトップ・オブ・トップである。

 そのたった100人の枠のうち、毎年半数以上もの合格者が、たった一つの塾から送り込まれているのを知っているだろうか。その塾こそ「鉄緑会」である。その21年の理Ⅲ合格者は54人だが、60人を超える年も多い。東大全体での合格者数は522人。東大合格者の6人に1人以上は鉄緑会の出身者なのだ。

 鉄緑会の創立は1983年。「鉄」は、東大医学部の同窓会組織「鉄門倶楽部」に、「緑」は東大法学部の自治会「緑会」に由来する。つまり東大の理系と文系の最難関を目指すための専門塾である。

 鉄緑会では、ドラマ化もされた人気漫画『ドラゴン桜』(講談社)のようにギリギリでもいいから東大に合格することを目指すのではなく、余裕を持って東大に合格できる学力を身に付けることから逆算した6年間分のカリキュラムと教材が用意されている。その量と質には他塾の講師も舌を巻く。進度も速い。例えば中学3年間の内容は中1の1年間で終わらせてしまう。