昨年12月、愛知銀行と中京銀行が経営統合を発表した。愛知県の産業界は大きな構造変化に直面しているところ。この統合は、中京圏の金融機関が動乱時代に突入する引き金となりそうだ。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
中京圏「動乱」突入の引き金に
愛知銀・中京銀統合の衝撃
「これから愛知県とその周辺地域の地域金融機関は、激変期に突入する。起こるのは単なる地方銀行同士の統合だけではない」。中京圏(愛知県、岐阜県、三重県)の地方銀行関係者は口々にそうささやく。
きっかけは愛知県内で勃発した地方銀行の再編だ。仕掛けたのは愛知銀行と中京銀行である。
2021年12月、愛知銀と中京銀は経営統合に関する基本合意を発表した。これにより両行は名古屋銀行を抜き、愛知県内ナンバーワン地銀に躍り出る(預金残高ベース。下図参照)。
愛知銀は住宅ローンなどに強く個人基盤が厚い。一方で、中京銀は県内で圧倒的な強さを見せた旧東海銀行(現三菱UFJ銀行)の親密行とあり、富裕層や名門企業との取引が多い。そうした各行のノウハウを融合させる他、重複店舗の最適化などを行って収益アップを図っていくという。
もっとも、中京銀は中京圏に本店を置く地銀幹部に「台風の目」と称される再編の筆頭候補だった。
中京銀株の約4割を保有する三菱UFJ銀が、国際的な金融規制の強化への対応のために保有株の放出を望んでいたのは、もはや公然の秘密となっていた。そしてその意向に呼応するように、中京銀も3代前の深町正和頭取時代から他行との統合を否定しないスタンスを表明していたのだ。
中京銀は、21年2月に公表した中期経営計画で抜本改革も打ち出していた。「現状の預貸利益・有価証券利息を中心とした収益構造では、将来的に収益性・健全性の維持が困難」(中京銀)として人員数約25~30%の削減などを発表。6月には「信用力の低下を恐れて銀行はやりたくてもできない」(メガバンク幹部)希望退職の募集という、異例の施策まで講じていた。
そんな中京銀の再編は想定内の出来事だったはずだ。にもかかわらず、なぜ中京圏の地銀関係者らは「激変期への突入」とまで言って身構えているのか。