おかしい人は100%「人との距離の取り方」おかしい【書籍オンライン編集部セレクション】
「すべての悩みは対人関係の悩み」と喝破したのはアルフレッド・アドラーという心理学者ですけど、極論じゃんと言いたくなりつつも否定できない苦い思い出がありませんか。わたしにはめちゃくちゃあります。特に「人との距離の取り方」って本当に難しいです。学生の頃ある定食屋でプロサッカー選手と鉢合わせたことがあるんですね。舞い上がってサッカーの戦術について質問したら、横にいたマネージャーさんに獲物を狩る目で睨まれました。当然です。今でも思い出すと胃から酸っぱいものが込み上げます。どうすれば人と「適切な距離感」を保って付き合うことができるのでしょうか?
会話における人間関係の問題点と解決策、そして悲しみと喜びを一つひとつ紐解いていく『会って、話すこと。』という本があります。この本の中で、著者の田中泰延さんは「おかしい人のおかしさは人との距離の取り方のおかしさが100%」と言い切ります。おかしい俺はどうすりゃいいのよ。聞きました。(構成:編集部/今野良介 初出:2022年1月21日)
「距離感がおかしい人」が共通して言うワード
「距離感がおかしい人」というのがいる。
たいして仲良くもないのにタメ口で話してくる人、他人が言ってほしくないことを言う人、なにかにつけて意見を言おうとする人、さらには物理的に顔を近づけすぎて話す人までいる。
「人との距離の取り方のおかしさ」の多くは「欲を出す」ことに問題がある。前から話したかった人と話した時(もっと親友っぽくなれるのではないか)と欲をかいて要らぬことを言う。好意を抱いた相手と2人で食事をしたからといって(今夜なんとかなるのではないか)とすぐ手を出す。多くは破滅への道である。
この世で一番大事なのは「人との距離の取り方」で、おかしい人のおかしさというのは人との距離の取り方のおかしさが100パーセントなのだ。勝手に間合いを詰めて自滅するぐらいなら、離れていたほうがいい。
わたしがこう言うと、反論してくる者がある。
「そんなこといっても、一歩踏み込まないと、他人とは仲良くなれないだろう」
これこそ、わたしが50数年生きて見てきた「距離感がおかしい人」が共通して言うワードだ。
考えてみてほしい。人はどんな人に好意を持つのか。
ズカズカと距離を詰めてきた人ではない。
ブラッド・ピットがあなたに話しかけてきて一歩踏み込んできたか?
トム・クルーズがあなたの家に訪問してきて距離を縮めてきたか?
自分がするべき仕事をしたり、自分にしかできない能力を発揮すれば、他人が距離を縮めようとしてくる。そうなればあなたが応じるか、応じないかを決めることができる。それが主体的に生きるということだ。
人との距離は、じつは自分一人で自分を磨いてつくるものなのだ。
自分のことは話さなくていい。相手のことも聞き出さなくていい。
『会って、話すこと。』は、毎日の会話の中で、こんなことに苦しんでいる人に読んでもらいたい。
・ 自分のことをわかってもらおうとして苦しんでいる人
・ 他人のことをわかろうとして苦しんでいる人
・ 他人を説得したいと思って苦しんでいる人
・ 他人を思い通りに動かしたいと思って苦しんでいる人
・ 他人にもっと好かれたいと思って苦しんでいる人
・ 会話でもっと学びを得たいと思って苦しんでいる人
・ 会話でもっと笑いたいと思って苦しんでいる人
興味もないのに相手の話を聞くふりをしたり、
聞いてもいないのに相槌を打ったり、
理解してもいないのに相手の言葉を反復したり、
そんな会話術が人間同士が正直に向かい合う態度といえるだろうか。
あるいは、興味本位に相手に根掘り葉掘り質問を浴びせたり、
自分を理解させたくて心の内面を相手にぶちまける、
そんな姿勢が向かい合う二人を幸せにするだろうか。
また、上手な世渡りのために相手を持ち上げたり、
自分の利益のために相手に「イエス」と言わせる、
そんなテクニックが誠実だと言えるだろうか。
自分のことは話さなくていい。
相手のことも聞き出さなくていい。
ただ、お互いの「外」にあるものに目線を合わせ、
同じ方を向くことができれば、
誰とだって会話は続くし、楽しくなる。
2020年から非日常になってしまった「会って、話す」を問い直し、
幸せな人間関係を築く技術と考え方を伝えます。
【目次】
はじめに 大阪人の会話に「オチ」と「ツッコミ」はない 《田中泰延》
序章 なぜ「書く本」の次に「話す本」をつくったのか?
・この本は、前の本と密接に関連している 《田中泰延》
・おじさん同士の会話に、だれが興味あるのか 《今野良介》
第1章 なにを話すか
ダイアローグ1 「わたしの話、聞いてます?」 《田中泰延 × 今野良介》
その1 相手はあなたに興味がない
その2 あなたも相手に興味はない
その3 わたしのことではなく、あなたのことでもなく、「外部のこと」を話そう
その4 「おもしろい会話」のベースは「知識」にある
会話術コラム① とにかく話が飛ぶ浅生鴨さん
第2章 どう話すか(とっかかり編)
ダイアローグ2 「ちがうやろ!」 《田中泰延 × 今野良介》
その1 「関係ありそうな、なさそうなこと」を話そう
その2 「ボケ」は現実世界への「仮説」の提示
その3 「ツッコミ」は「マウンティング」である
その4 審査員になるな
その5 会話に「結論」はいらない
その6 「知らんけど」の効用
会話術コラム② 困った時はこけてみろ ~ 岸本くんの教え ~
第3章 どう話すか(めくるめく編)
ダイアローグ3 「ビジネス書なんですけど」 《田中泰延 × 今野良介》
その1 「他人の発言にどう返したか」が、今のあなた
その2 言葉は「細部」が大事
その3 人間は会話すると、必ず傷つく
その4 行為より、言葉のほうが重い
その5 エトスなき会話は虚しい
会話術コラム③ 会話術の本、その素晴らしきデタラメ世界
第4章 だれと話すか
ダイアローグ4 「わたしのこと、好きですか?」 《田中泰延 × 今野良介》
その1 「機嫌よく生きる」大切さ
その2 会話の始め方、終わらせ方
その3 おかしい人のおかしさは「距離の取り方」のおかしさ
その4 悩み相談には種類がある
その5 自分が楽しくなるリアクションをしよう
会話術コラム④ 好きという言葉は、最悪です
第5章 なぜわたしたちは、会って話をするのか?
ダイアローグ5 「失敗談を聞かせてください」 《田中泰延 × 今野良介》
その1 オンラインはなにがダメなのか
その2 「書く」より先に「話す」があった
その3 「出会い」とは「仕入れ」が他人と響き合った時
その4 吐露ということ
その5 違う人と、同じものを見る
ダイアローグ6 「また会いましょう」 《田中泰延 × 今野良介》
おわりに
・廃れない本 《今野良介》
・「わたし」と「あなた」の間に「風景」がある 《田中泰延》