行政がなりふり構わず措置命令、消費者も混乱

 さらにおかしいのは、司法の判断を待つことなく措置命令に踏み切った点である。とにかく「空間除菌に根拠なし」という結論にもっていくため、なりふり構わず措置命令をゴリ押ししているようにも見える。

 先ほども申し上げたように、大幸薬品側は仮の差し止めを勝ち取っているのだが、これはかなり異例のことだ。だから、大幸薬品は自社HPで、司法によって「消費者庁に提出している試験結果などが、二酸化塩素による除菌・ウイルス除去効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め」られたと胸を張っている。

 しかし、消費者庁はその事実をもみ消すかのようにすぐさま4商品の措置命令を出した。「消費者庁の命令は、東京高等裁判所での審理が開始される前に行われたものであり、極めて遺憾」と大幸薬品側が恨み節を述べていることからもわかるように、こんな形で措置命令を出しても、対立と混乱を招くだけで、消費者にメリットもない。

 筆者が、先ほど近所の商店街をのぞいてきたら、措置命令に従ってペン型やスプレー型を引っ込めた大手チェーン店があった。一方で、数百メートル離れた別のドラックストアでは、一番目立つ場所に「クレベリン」専用の棚を設けて、置き型はもちろん、ペン型、スプレー型など今回対象の4商品すべてを売っていた。つまり、措置命令は出したものの、大幸薬品側が全面対決の姿勢を崩さないことで、店側も対応が定まらないのである。当然、消費者も混乱する。

 こういう事態を避けるのも消費者庁の役目のはずだが、「そんなもん知るか」とばかりに措置命令に執着している。とにかく1日でも早く措置命令のリリースを出して、マスコミに「ウイルス除去 根拠なし」(NHK政治マガジン1月20日)『クレベリン、「空間除菌」根拠なし』(毎日新聞1月21日)という印象のニュースを流させたかったとしか思えないほど強引だ。

 さて、そこで次に疑問に浮かぶのは、消費者庁はなぜそこまで「クレベリン」と「空間除菌」を目の敵にしているのかということではないか。そして、なぜこのタイミングでの措置命令にこだわったのか、ということも気にならないか。