柳井正氏の「反日発言」?怒り心頭の方々に見てほしい現実
新年早々、不愉快になったという方もいらっしゃるのではないか。
昨年末に「日本経済新聞」に登場したファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏の発言に対して、愛国心あふれる方たちが「反日」「妄言」などと怒り心頭なのだ。
問題とされている発言は、同紙の「そこが知りたい」という経営者インタビュー連載。聞き手から、米中対立が続いていることを振られた柳井氏は、このように答えた。
「現実を見てほしい。米中は対立しているかのように見えて実際は対立していない。米国の金融資本は中国への投資に流れ、逆に米アップルなどの製品もみな中国製。中国の対米輸出額も増えている。米中は経済的にはうまくいっている」(日本経済新聞 2021年12月30日)
「(潜在的競合をたたく)米国の本音を理解すべきだ。かつての日本も今の中国と同じ目にあってきた。日本車の輸入車がハンマーで壊され、トヨタ自動車もリコール対応の推定有罪で公聴会に呼ばれた。米国はそういうところがある」(同上)
確かに、アメリカという国はこれまでもありもしない「大量破壊兵器」をねつ造したり、「油まみれの水鳥」というインチキ写真を世界に流したりと、「ゲーム」を有利に進めるために他国を過度にたたくということを繰り返してきた事実がある。また、国民の不満や支持率アップのため、外敵の恐怖を過度にあおるというのも、トランプ前大統領以前の為政者たちも皆やってきた。そういう点においては「一理ある」とうなずく方もいらっしゃるのではないか。
ただ、これは保守の皆さんにとっては、とても看過できない「反日発言」である。
ご存じのように、日本の保守は、西側諸国の政治介入・かいらい支配に抵抗して民族的自立を求める中東地域などの右翼と異なり、アメリカに忠誠を誓うことで、日本の領土や安全を脅かす中国や北朝鮮から守っていただくという「親米保守」だ。そんな「頼れる兄貴」的存在のアメリカ様が、対立していると思っていた中国と裏で良好な関係を築いている、なんて話は絶対に認めるわけにはいかない。
では、柳井氏のこの「米中は対立していない」という見立ては事実なのか。結論から先に言ってしまうと、「正しい」ともいえるし「正しくない」ともいえる。