テスラ、中古が新車より高いワケPhoto:Sjoerd van der Wal/gettyimages

 その「テスラ・ピンプ(あっせん業者)」は今、かつてないほどの旺盛な需要を目の当たりにしている。

 イタリア・ミラノ在住のアリ・ヘニシュさん(26)は、欧州で高級車を買い、ディーラーに上乗せで転売することが仕事だ。新型コロナウイルス禍前は、テスラ車の所有者は提示されるがままの金額に満足して車を手放していた。

 ところが、足元では引き合いがあまりに強いため、入札競争を余儀なくされることが当たり前になった。テスラ車の売り手の一部は、買い注文が殺到しており、エクセルのスプレッドシートで整理しなければならないほどだ。ヘニシュさんによると、まだ走行距離の短い「モデル3」なら、売却で4500ドル(約51万8500円)以上の利益が舞い込んでくる。

 ヘニシュさんは車の転売を始めて約8年だが、「このような状況は今まで見たことがない」と話す。「テスラ・ピンプ」の異名は取引先の一人がつけたものだ。

 自動車市場はこれまでの構図が一変した。テスラ車を含め、中古車の一部は新車よりも高く売れる。部品不足やサプライチェーン(供給網)の制約で、特定の新型モデルは購入できない。これが中古車価格を押し上げており、「ディーラーの駐車場から出た瞬間、価値が下がる」との通念は覆された。