米労働市場のナゾ 日欧との相違の根源どこにPhoto:MediaNews Group/Orange County Register via Getty Images

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 米国経済は2020年初めに底入れして以降、他の主要先進国を難なく上回る回復ぶりを示している。ただし、極めて重要な一面である国内の労働力は例外である。

 経済協力開発機構(OECD)によると、2019年10-12月期から2021年10-12月期にかけて、労働参加率(15歳から64歳の人口に占める就業者と求職者の割合)は米国で0.7ポイント低下した一方、日本とカナダでは上昇した。ユーロ圏の労働参加率も、入手可能な直近データの21年7-9月期には、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を大きく上回った。

 米国の労働人口が減少したのは、多くが仕事を引退したことによるが、25~54歳の参加率も他国より低下している。

 この相違の根源を探ることで、もう一つの疑問に答えが見つかるかもしれない。その疑問とは、なぜ米国のインフレ率は他国より高いのか、である。それは一見したところ、労働力を含めた、より強い需要と一段と制約の掛かった供給の組み合わせのように思える。

 相違の原因の一つとして、コロナ初期の労働者支援を巡るアプローチの違いがある。欧州諸国の政府は歴史的に、不況時に労働者の雇用を維持しようとする。日本企業は長い間、従業員数の維持を優先してきた。一方、米国はレイオフされた労働者を直接支援し、新しい仕事や新しい産業への移行を促してきた。