政権与党の自民党と公明党の関係がギクシャクしている。今夏の参議院選挙での選挙協力協議が難航し、公明党が怒りと不満を公の場で爆発させる異常事態だ。自民党内からは「もう、あの人に頭を下げるべきではないか」との悲鳴も漏れる。(イトモス研究所所長 小倉健一)
参院選の自公相互推薦は
ギクシャクの末に「時間切れ」
20年超にわたる固い絆が新たな「キング」の登場で崩れかねない状況に陥っている。自民、公明両党の選挙協力協議が難航し、今夏の参議院選挙は「時間切れ」のため自力で乗り切らなくてはならない公算が大きくなっているためだ。
政権与党の強固な関係に腐心してきた議員が政界引退や非主流派に転じ、岸田文雄首相(自民党総裁)率いる現在の自民党執行部と公明党の関係はギクシャクしている。自民党内からは「もう、あの人に頭を下げるべきではないか」との悲鳴も漏れる。
「お願いした期間は過ぎた。公明党として自力で選挙準備を進めようと踏み切った」。公明党の山口那津男代表は2月6日のBSテレ東の番組で、今夏の参院選で自民党との「相互推薦」方式による選挙協力に否定的な考えを示した。
1999年から自民党との連立政権を組む公明党のトップが、ここまで怒りをあらわにしたのには理由がある。
支持母体に創価学会を持つ公明党は、衆議院選挙の小選挙区で自民党候補を支援。その集票力の高さから「多くの当選者を生み、政権の安定と維持に多大な貢献をしてきた」(公明党関係者)との自負がある。
選挙協力の枠組みは参院選でも2016年から本格導入した。定数1の「1人区」で自民候補を推薦する代わりに、改選数2以上の「複数区」では自民党が公明候補を推薦する「相互推薦」方式で協力している。
3年ごとに実施される参院選では、19年も「相互推薦」により与党で71議席を獲得。非改選組を加えて過半数を上回る141議席を確保し、連立政権の安定運営につながってきた。当然、今夏の参院選でもその枠組みが揺らぐことはないと思われていたが、昨年秋の岸田政権発足に伴い異常事態が発生したというのだ。