菅義偉前首相盟友の二階俊博氏が会長を務める日越友好議員連盟が主催した歓迎朝食会で、ベトナムのファム・ミン・チン首相(左)から贈り物を受け取る菅義偉前首相(11月23日) Photo:JIJI

今もニュースを賑わす安倍晋三元首相と違って、直前まで首相を務めた菅義偉氏の話題はぱたりと聞かなくなった。そんな人は多いだろう。しかし実は今、菅氏は自民党の勢力図を動かし得る人物として無視できない存在となりつつある。「あなたでは総選挙を戦えない」と退陣に追い込まれた菅氏が、再び権力をまとい始めた理由とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)

権力の頂点から失墜して3カ月後には
「菅派」結成の期待が高まるまでに…

 みなさん、ちょっと前まで、権力の頂点にいたあの人のこと、忘れてしまっていませんか?

 数がモノをいう政界で「一匹狼」に再び光が当たっている。わずか3カ月前に権力の頂点から引きずり降ろされた菅義偉前首相だ。内閣支持率の急落で総選挙直前の自民党議員からソッポを向かれた菅氏だが、最近は「菅派」結成を期待する声も上がるなど動向が注目されている。

安倍元首相が菅氏を持ち上げるのが
「意外」である理由

「菅さんが派閥をつくろうと思えば、簡単に結成できるのではないか」。12月3日のインターネット番組で、前首相による「派閥結成」の動きに触れたのは意外な人物だった。自民党最大派閥「清和政策研究会(安倍派)」のトップに立ったばかりの安倍晋三元首相である。

 史上最長の長期政権を築いた安倍氏は首相在任中、女房役の菅官房長官を一度も代えることなく二人三脚で歩を進め、菅政権誕生の立役者となった。それなのに「意外」と評したのは菅政権末期に両者の間には「すきま風」が吹いていたからだ。

 首相官邸担当だった全国紙政治部記者が語る。「とりわけ安倍政権では今井尚哉首相秘書官と菅官房長官(いずれも当時)の折り合いが悪く、互いが知らない動きをするようになっていました。第1次安倍政権時代のような『官邸崩壊』がまた始まったともささやかれていました。その延長にあった菅政権の最終盤なんてひどいものでしたよ」。

 それほど関係が破綻してしまった安倍氏が、菅氏を今になって持ち上げるのはなぜか。それは、「令和のキングメーカー」とも称される安倍氏ですら無視できないほど、菅氏が再び存在感を高めているからだ。

 アップダウンが激しい評価の裏には早くも「ポスト岸田」をにらんだ水面下の攻防が見える。表舞台から消えたかに見えた菅氏が、この先「永田町の台風の目」となり得る理由を解説しよう。