感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!

【精神科医が教える】<br />「合理的思考」の落し穴イラスト:カツヤマケイコ

理屈に頼る危険性

きょうのひとことは、
「人は必ずしも合理的に動かない」

無駄なく効率的に、合理的な理屈に基づいて考えたり行動したりしすぎる人がいます。

会社や組織で仕事を進めるためには、許可や同意を得るため、論理的思考に基づく、合理的な提案や判断が求められるでしょう。

そうした環境にずっといると、世の中の多くの人が合理的な考え方や行動をするものだと、勘違いしてしまいがちです。

そんなふうには考えていないつもりでも、仕事での考え方が染みついたりして、いつの間にか漠然とそんなふうに思い込んでいることがあるのです。

ところが、世の中を広く見まわしてみると、大量の過去の統計やデータに基づいて合理的な選択をする人工知能(AI)みたいな考え方をする人は、少数派でしょう。

人間の根本にあるのは、合理性ではなく感情だからです。

合理的に正しい選択肢だとしても、感情的には納得できないから、合理的ではないほうを選択してしまうことはよくあることです。

いろんな統計やデータから導き出した合理的選択肢と、より自分の情緒に訴えかける魅惑的な選択肢があったとしたら、必ずしも合理的な選択をするわけではないでしょう。

合理的な選択が、いつも正しいわけでもありませんからね。

交渉事で、自分が考えた合理的な提案をしても、相手が必ずしも自分と同じく合理的に考えるわけではありません。

人の心は必ずしも合理的には読めませんから、合理的な判断が万能であるかのように計画を建てると、どこかで行き詰まったり手痛い思いをしかねないということでもあります。

ある程度の推測を立てるうえで、合理的思考は役立つかもしれません。しかし、実際のところ、そんなにあてにならないことのほうが多かったりします。

仮に合理的な考え方や判断を下すことが多い人であっても、その日その時にその人が置かれた状況によって、一時的に感情的な判断や行動をしたりすることもあるからです。

もし合理的思考が万能なのであれば、過去のデータやアンケートなどに基づいて導き出した合理的判断をもとに、その道のプロたちが優れた頭脳を結集して開発した商品やサービスが、必ずヒットするはずです。

ところが実際は、「千三つ」といわれるように、食品や飲料の業界では1000の新商品を開発してもヒットするのは3つくらいと、いわれているそうです。

その背景には、人は必ずしも合理的に考えない、合理的に判断しないということもあるでしょう。

やはり人は、自動車工場の工作機械のように、合理的にプログラミングをしたとおりに動くわけではないのです。

だったら、どうしたらいいのかというと、ポイントの1つは「素直さ」にあると思います。

合理的判断は大事かもしれませんが、それだけでなく、腹のうちを見せたりしながら、自分の素直な気持ちをどれだけ出せるかが、1つのカギだと思うのです。

交渉事でも、正直に自分の気持ちを話してるなって思うと、話はちょっと先に進みやすいですからね。

一方、考えていることと話していることが違っていて、妙な含みを持たせる雰囲気が出てしまったりすると、腹の探り合いみたいになって、上手くいくものもうまくいきません。

自分の腹のうちを見せない人、もしくは腹のうちを見せていないかのように思われる人は、人間関係が崩れやすいです。

人というのは、けっこう泥臭いものですから、合理的な考え方に偏らないようにしましょう。

きょうのひとことは、
「人は必ずしも合理的に動かない」
でした。

参考になったかしら?