町を盛り上げ、蔵を仕切り直す酒
筑波山北麓に位置する桜川市真壁町は、江戸時代に陣屋町として栄え、町並みは重要伝統的建造物群保存地区に指定。登録有形文化財の建造物は100棟以上も残る。その1棟で酒造りする村井醸造は、1670~80年に近江商人の村井重助が良い米と水が豊富なことから醸造を開始。
現蔵元の村井重司さん78歳は12代目だ。主銘柄の「公明」の名前は、公明正大と「こーめー」が米に通じることからで、某政党とは無関係。
長く葬祭用の酒として利用されたが、人口減少に伴い製造量は激減。蔵の起死回生を図り、1年前に立ち上げた銘柄が「真上(しんじょう)」だ。
「高品質な酒で真壁を上質に、盛り上げよう」と重司さんが命名した。
製造責任者は36歳の臼井卓二さん。他の蔵で修業後、2018年から南部杜氏の伊藤政美さんに付いて技術を学び、今期から中心となって蔵人2人で醸す。目指す味はインパクトよりも飲みやすさ。居酒屋さんで喜ばれる酒で、香り控えめ、切れ味良く、するすると自然に杯が進む酒を手がける。
今期さらに乳酸菌添加酛という新技術に挑む。21年に茨城県産業技術イノベーションセンターの飛田啓輔さんらが、低温でも乳酸を生じ、酵母を健全な発酵へ導く安全性の高い乳酸菌株を開発。共同研究を開始した。「安全で強い酒質、再現性が高い酒に」と卓二さん。
冬場の製造期間中は休みなしだが「酒造りは面白くて、これが永遠に続いたら~」と苦笑する。
製造が終われば、蔵の仕切り直し酒「真上」を背負い営業へ。
●村井醸造・茨城県桜川市真壁町72●代表銘柄:真上 純米吟醸、真上 特別純米、公明 大吟醸、純米酒 真壁、特別純米酒 ピュア茨城●醸造責任者:臼井卓二●主要な米の品種:山田錦、ひたち錦、八反錦