「24時間」思考+「1秒」で行動、
他人を巻き込み思考の質を高める

 経営者はどうしても孤独です。

 ただし、考えたり、アイデアを集めたりすることに関しては、多少事情が異なります。私たちもひとりの人間であって、知っていること、経験は万能ではありません。そして、私たちの知らないところで、世界はどんどん変化しています。どんな超人でも、そのすべてを自分だけでカバーはできません。

 大切なのは、何かを考える際、他人を上手に巻き込むこと。気になる事柄が生まれたら、すかさず、自分よりも詳しい複数の人に聞いてみること。私が東日本大震災直後、使い道のなかった遊休地を即座に太陽光発電へと転換できたのも、うまく他人を巻き込めたからです。

 私は、新しいアイデアや情報、面白そうな、改善に役立ちそうなヒントを得たら、すぐに情報収集を開始し、詳しい人に直接連絡して聞くようにしています。

 そこで自分のルールにしているのは、「1秒後に動く」こと。

 それが無理でも「24時間以内に行動開始する」という法則です。

 とにかく、まずはメールを打ち、電話を掛けてみるのです。

 こうして他人を巻き込みながら、うまく相手のペースに乗せられないよう、

○質問攻めにする
○おかしい部分、矛盾した部分を見逃さずツッコむ(特に数字)
○自分がしたいことを中心に話し、相手主導にしない

 を徹底し、「使い倒す」のです。

 ひとつ調べ、誰かに話を聞いたら、そこで得た情報を元にさらに深く、連鎖的に収集していきます。こうすれば、つい忙しくて後回しにしていたら、そのままになってしまって、後から気づいたら大チャンスを逃していた……などという事態も防げます。

 最悪なのは、思いついたのに何もしないこと。

 思いついたアイデアには必ず価値がありますし、仮に調べたら案外だった、成立し得ない話だったとしても、そこに至るまでの情報は頭に残り、次に浮かぶアイデアをさらに良い物にしてくれます。決してムダにはならないのです。

 そして、この法則は決断を大胆に、迅速にできるようになる点でも役に立つと思います。思いついたら、即行動です。

 四六時中考えていると、ニュートンのリンゴのごとく思わぬところから急にアイデアが浮かびます。しかも、思わぬところからヒントが得られたり、全く関係のない業界の話がブレークスルーのきっかけになったりもします。

私が徹底した自動化、省人化、そしてそれをささえたロボットの代用としてのフォークリフト活用などは、ある日突然、思い浮かんだものです。

 ただしその背景には、24時間、それこそ夢の中でも改善を考え続けていたからこそなのです。

(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)

平 美都江(たいら・みとえ)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。