東海道新幹線「のぞみ」が、3月14日で運行30周年を迎える。その誕生の経緯と、実現までの苦難、そして、新幹線の歴史において果たした役割とは。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
戦前に旧満州で運行していた
もうひとつの「ひかり」と「のぞみ」
3月14日で、東海道新幹線に「のぞみ」がデビューして30周年だ。58年前の1964年に開業した東海道新幹線に「のぞみ」が登場したのは1992年。つまり東海道新幹線の歴史は「のぞみ」以降の方が長くなっているのである。
「のぞみ」は検討段階では「スーパーひかり」と呼ばれていたが、営業開始に先立ち列車名の一般公募が行われ、外部有識者を含む選考会で決定された。
委員の一人だったエッセイストの阿川佐和子さんは、当初「きぼう」が有力案だったが、「こだま」「ひかり」など、これまでの特急列車は大和言葉で名付けられてきたことを踏まえ、「きぼう」を大和言葉に置き換えた「のぞみ」を提案したと語っている。
それ以前の「こだま」は、新幹線開業以前に在来縁の東京~大阪間を6時間半で結んでいたビジネス特急に由来し、「ひかり」は列車名の一般公募で第1位を獲得したことで選ばれた経緯がある。「こだま(音速)」よりも速い「ひかり(光速)」という組み合わせは、なかなかよくできたものである。