2020年春に行われる東海道新幹線の春のダイヤ改正が発表された。ピーク時間帯の運行間隔はなんと平均3分30秒。まるで地下鉄のようなダイヤが可能になった背景には、JR東海が工夫の末に実現した「こだまの高速化」がある。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
来春から東海道新幹線は
地下鉄並みの運行間隔に!
平均3分30秒。地下鉄の運行間隔ではない。2020年3月14日以降の、東海道新幹線のピーク時間帯の運行間隔である。
12月14日、JR東海は春のダイヤ改正の概要を発表した。それによると「のぞみ」の運行本数を1時間あたり最大10本から最大12本に増発し、最も利用者数が多い時間帯は「のぞみ」12本、「ひかり」2本、「こだま」3本の合計17本の運行になる(車庫に向かう回送列車をカウントすれば、運転本数はさらに増える)。「のぞみ」だけを見ても平均5分間隔。もはや「超特急」ではなく「通勤電車」の次元である。
JR東海は今回のダイヤ改正を、「のぞみ」中心のダイヤになった2003年以来の大変革だと胸を張る。実際、東海道新幹線の輸送人キロ(利用者数と利用距離をかけ合わせた数字)は、2003年度の403億人キロから、2018年度には563億人キロまで40%近く増加。輸送効率(全ての時間帯、全ての列車を合わせた平均乗車率)は66%を超えている。
これは、定員のカウント方法は異なるが、地下鉄銀座線に匹敵する数字である。「のぞみ12本ダイヤ」は、伸び続ける「のぞみ」需要に対するJR東海の回答であり、東海道新幹線の究極形とも呼ぶべき姿といえるだろう。
東海道新幹線の開業から56年、「のぞみ」の運行開始から28年、ついに東海道新幹線は「のぞみ」以降の歴史の方が長くなろうとしている。
東海道新幹線に「のぞみ」がデビューしたのは1992年。航空機に対抗すべく時速270キロ運転を行い、東京~新大阪間を2時間30分で走り抜けた。1993年に1時間1本だった「のぞみ」の運行本数は、1996年に2本、2001年に3本と増えていき、2003年のダイヤ改正で1時間あたり7本まで引き上げられた。これが2003年のダイヤ改正が「大変革」たるゆえんである。
2003年の「のぞみ」大増発を可能にしたのは、車両の世代交代であった。この時、最高速度時速220キロの「100系」新幹線が引退し、「こだま」を含めて全ての列車が時速270キロで運転できるようになったのである。