バカは栄養たっぷりの果実

 ぼくがバカをすすめる理由は、次の3つのフレーズで言い表わすことができます。

・バカになればなるほどみんなに愛される
・バカになればなるほど得と幸せが訪れる
・バカになればなるほど人生が面白くなる

 今はまだ、この「真理」に気付いている人は、あまり多くありません。ということは、これを読んでいるあなたは、大きなチャンスを手にしたことになります。

 ぼくがバカについて考えたことや歩んできた道のりを参考に、バカという栄養たっぷりの果実をもぎ取ってください。

 ぼくはお赤飯が大好きです。あれはごま塩をかけると、香りや味がまた一段とよくなる。でも、かけずに食べる人もいます。余計な手間を省いて食べる自分はお利口だぐらいに思っているかもしれませんが、違うんです。ごま塩をかけるとどんなにおいしくなるか、ごま塩がどんなに大事かを知らない。

 人生もバカというごま塩をかけると、格段においしくなります。毎日が楽しくなるし、失敗に負けず悩みをはね返せる強い自分にもなれる。

「ごま塩もだけど、バカって大事なんだな。もっと振りかけてみよう」――。多くの人にそう気づいてもらえたら、バカをおすすめする本を書いた甲斐があるというものです。

「バカって素晴らしい」「バカって大事だな」と思えた瞬間から、あなたの目に映る景色は大きく変わることでしょう。

 バラ色の人生とバカ色の人生は、とてもよく似ています。

林家木久扇(はやしや・きくおう)
1937(昭和12)年、東京日本橋生まれ。落語家、漫画家、実業家。56年、都立中野工業高等学校(食品化学科)卒業後、食品会社を経て、漫画家・清水崑の書生となる。60年、三代目桂三木助に入門。翌年、三木助没後に八代目林家正蔵門下へ移り、林家木久蔵の名を授かる。69年、日本テレビ系「笑点」のレギュラーメンバーに。73年、林家木久蔵のまま真打ち昇進。82年、横山やすしらと「全国ラーメン党」を結成。92年、落語協会理事に就任。2007年、林家木久扇・二代目木久蔵の親子ダブル襲名を行ない、大きな話題を呼ぶ。10年、落語協会理事を退いて相談役に就任。21年、生家に近く幼少の頃はその看板を模写していた「明治座」で、1年の延期を経て「林家木久扇 芸能生活60周年記念公演」を行なう。「おバカキャラ」で老若男女に愛され、落語、漫画、イラスト、作詞、ラーメンの販売など、常識の枠を超えて幅広く活躍。「バカ」の素晴らしさと底力、そして無限の可能性を世に知らしめている。おもな著書に『昭和下町人情ばなし』(NHK出版)、『バカの天才まくら集』(竹書房)、『イライラしたら豆を買いなさい』(文藝春秋)、『木久扇のチャンバラ大好き人生』(ワイズ出版)など。