バカは強い、バカは愛される、バカは楽しい、バカは得である――。国民的長寿お笑い番組の“黄色い人”として老若男女に大人気、バカの天才である林家木久扇師匠(84)が、バカの素晴らしさとバカの効能を伝える『バカのすすめ』を出版した。
世の中が息苦しさに覆われ、「生きづらさ」という言葉が広がる今こそ、木久扇師匠が波乱の体験や出会いから導き出した「バカの力」「バカになれる大切さ」は、ひときわ大きな意味を持つ。バカという武器に助けられた人生で起きた波乱の出来事や、「あの番組」の共演者&歴代司会者についての愛あふれる考察など、初めて明らかにする秘話もたっぷり。笑いながら読み進むうちに多くの学びがあり、気持ちがどんどん楽になって、人生観も見える景色も変わる一冊。この連載では本書から一部を抜粋し、再編集して特別に公開する。(構成 石原壮一郎)

【林家木久扇が力説】バカの天才がバカを全力ですすめる3つの理由写真/榊智朗

バカほど得で楽しい生き方はない

 なぜバカをすすめるのか。

 自分はバカになんてなりたくないし、バカにされるのは絶対に嫌だ。そう思う人もいるでしょう。

 じつは、バカほど得で楽しい生き方はありません。

 人間は自分の中からバカを遠ざけようとしても、お利口に生きられるわけじゃない。それどころか、たくさん損をしてしまうでしょう。

 逆に、積極的にバカな自分になろうとすることで、多くの人に愛されたり仕事がうまくいったり、長い目で見るとたくさんのプラスがある。自分の人生を振り返って、つくづくそう思います。

 ぼくもいつの間にか84歳になりました。落語家生活は今年で62年目です。バカなことをいっぱいやり、バカな失敗も山ほど重ねてきました。漫画家で身を立てるつもりが、ひょんなことから落語の世界に。落語家をやりながらラーメン屋もやり、国内だけではなくスペインにもお店を出しました。そして大損しました。

 最新刊の『バカのすすめ』には、ぼくが歩んできた妙に濃い道のりから学んだこと、バカについて考えたことをギュッと詰め込みました。

 八代目林家正蔵師匠をはじめお世話になった方々、「笑点」メンバーや歴代の司会者など、人生で出会った大切な人たちについても、初めて公にするエピソードをたっぷり入れながら書いています。

 どんなときもぼくは、思いついたことをすぐに実行に移してきました。我ながらバカだと思います。でも生きていくことは、自分の発想ややり方を貫いていくことでもある。こんなバカなことはできないなと思ってやめてしまうのと、実行するのとでは大違いです。

 失敗しても人に笑われても、ぜんぜんかまいません。やりたいことを我慢して、あとで「やればよかったかな」と思うほうが、よっぽどつまらないですから。