コロナ禍での六大学春季リーグ、早大・小宮山監督「鬼の指導」の手応えグラウンドで練習を見つめる小宮山悟監督 撮影:須藤靖貴

2020年シーズンを迎えた小宮山・早稲田では、投手陣に厚みが増して競争意識が高まっており、確実に小宮山が描く「正しい早稲田の姿」に近づきつつあった。選手も監督も手応えを感じていた矢先、コロナ禍が六大学野球にも襲い掛かる。(作家 須藤靖貴)

2020年はベンチ入り競争が激化
小宮山監督の理想に近い投手陣が完成

 小宮山・早稲田は2年目のシーズンを迎えた。キャプテンナンバー「10」を背負ったのはエースの早川隆久(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)。

「主将は野手が望ましいところですが」と、監督は指名の理由を話す。2019年の暮れのことだった。

「真っ先に顔が浮かぶ瀧澤(虎太朗)はケガが多くて練習にいないことも多かった。主将はいつでもグラウンドで先頭に立って戦う姿勢を見せてほしい。早川の練習姿勢は文句なしだし、弁も立つ。そこでチームリーダーに指名しました」

 戦力は昨年を上回る。特に投手陣の厚みはリーグ随一だ。早川以外にも、後にプロ入りする徳山壮磨(現・横浜DeNAベイスターズ)・西垣雅矢(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)をはじめ、力のある投手が揃った。

「ベンチ入りの競争が激しいところがいいですね」

 次の春季は優勝が十分に狙える。部の空気もいい。「今季は勝たなくては」という意識が4年生に強い。この秋のシーズン中、3年生だった彼らは危機感を募らせて自主的に話し合っている。小宮山から見れば「正しい早稲田の姿」にはまだまだではあるものの、チームはいい方向に進んでいた。

「ウチに限らず、今の風潮かもしれませんが、『みんなで一緒に』という姿勢があるようです。でも上が下に合わせるようでは強いチームにはならない。上は上で競い合う。そこに下からの突き上げが入る。そうあるべき」

 さらに上のレベルを目指すために、研ぎ澄まされた気持ちでグラウンドに立つこと。その集合体が「早稲田大学野球部の本来あるべき姿」である。今季の早稲田の投手陣には、小宮山の目指す理想像に近いような競争意識が感じられた。

 ところが。20年の春――。

 世界中が新型コロナウイルスに振り回される。