IT(情報技術)企業は、多額の株式報酬と株価の高騰で人材を引きつけてきたが、昔ながらの手段を利用し始めている企業もある。それは現金だ。グーグルの親会社アルファベットは10月、理由や規模をほとんど問わずに賞与を与えられる新しい現金賞与制度を採用した。アマゾンは先月、従業員の現金給与の上限を2倍に引き上げることを通知した。ハイテク業界の一部のヘッドハンターによると、暗号資産(仮想通貨)やNFT(非代替性トークン)を手がけるスタートアップ企業の中には、人材を引き抜くにあたってIT大手よりも現金部分が大きい報酬パッケージを提示している会社もある。ヘッドハンターや報酬コンサルタントによると、こうした背景には、人員減少を食い止めたいとの企業の思惑がある。米国では在宅勤務が2年続いたことでキャリアを見直す人が増え、労働市場は逼迫(ひっぱく)している。インフレや株式市場の変動も、リスク志向の再考と現金志向を促している。