敵方の機銃掃射が、ウクライナ落下傘部隊のアナトリー・ハルチェンコ中尉をかすめ、隊員数人をなぎ倒した。彼らは暗闇の中、首都キエフ近郊のホストメル空港を目指していた。ウクライナの精鋭部隊は、首都の素早い制圧を目指したロシアのウラジーミル・プーチン大統領の計画を阻止しようとしていた。だが彼らの任務がうまく行く当てはなかった。その数時間前、ロシアのエリート空挺(くうてい)部隊がヘリコプターで降り立った。ロシアによるウクライナ軍事侵攻の初日だった。もしロシアがこの空港を制圧すれば、大量の兵士を送り込み、直ちに移動してウクライナの首都を陥落させられる。それは短期決戦を制して降伏を迫るというプーチン氏の戦略の一環だった。