なんで私ばっかり…「損する思考」を断ち切るたった一つのコツPhoto:PIXTA

 仕事を続けながら介護や子育てをするワーキングケアラー、子育てをしながら介護をするダブルケアラーの人たちは、分刻みの生活をしている。

 朝暗いうちに起きて家族と自分の弁当を作り、子どもや被介護者を起こして食べさせ、保育園やデイサービスに送った後、満員電車に乗り込む。会社に着けば残業せず仕事を終えられるよう集中し、退勤後はすぐに電車に乗り込み、スーパーで必要な物を買う。子どもや被介護者のお迎え、夕食の支度や洗濯をこなし、子どもや被介護者を食べさせ、風呂に入れ、寝かしつけ、明日の準備をする。すごい技術だ。

 彼らが研鑽(けんさん)した技術は、当然ながらビジネスの現場でも生かせる。具体的なケースからその神髄を学んでいこう。第1回は、幼い3児を育てながら祖母を介護するダブルケアラー女性の事例だ。

覚悟していたけど、想像と違った

 関東在住の小野玲奈さん(40代、仮名)は、生まれたときから母方の祖父母と両親、姉と暮らしていた。20代で結婚した翌年、母親が57歳で亡くなった。

 祖父はすでに他界していたが、祖母と父親は健在。小野さんの姉は、数年前に長男と結婚して家を出ている。身体が衰え始めた82歳の祖母と60歳手前の父親が二人きりで暮らしていくのは、誰の目から見ても難しいと思われた。そこで、小野さんは夫と相談し、祖母と父親との同居を決意した。

 ところが、いざ同居が始まると、祖母や姉と衝突する日々が続いた。

「祖母はきっちりした性格で、私は自由気ままな現代っ子。性格の不一致のせいか、祖母は姉が様子を見にくるたび、私に対する愚痴をこぼしていたのです。そして、姉は責任感の強い人だったので、祖母の様子を見に週に1~2回来ては、『私ならこうしてあげるのに』と口を挟んできました」

 母親を亡くした悲しみもまだ癒えていなかった小野さんは、「なんで私ばっかりこんなつらい思いをしないといけないの?」と涙を流した。

 しかし、この状況が一変する出来事が起きた。祖母との同居から2年後、小野さん夫婦に長女が生まれたのだ。小野さんは、生まれたばかりの長女を世話しながら、祖母の身の回りの世話をすることになった。