世界的な品不足が続いていた中、ロシアのウクライナ侵攻で、世界の生産はさらに不安定になった。不動産市場も例外ではなく、需給バランスの崩れや価格の高騰が懸念されている。これまで値上がりを続けてきた新築住宅価格は、今後どうなるのだろうか。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
相次ぐ品不足や値上げラッシュ
不動産市場も例外ではない
不動産市場において、品不足という話が多い。TOTOではウォシュレットの納期遅れのおわびの案内がホームページに掲載されている。ガス給湯器も冬場の需要期に品薄と納期遅れが深刻になっている。その標準使用期間は、家庭用で製造から10年ほどなので、10年前の新築戸数分の買い換え需要が生まれるが、対応しきれていない。
どちらも世界的な半導体不足に端を発している。これはコロナによるロックダウンの影響で工場が操業できずに生産不足になった結果だ。製品は1つでも部品がそろわなければ製品にならない。その製品の供給が滞れば、新築の家は引き渡しができなくなる。そうなると引っ越しもできなくなるので、私たちには切実な問題だ。
2021年にはウッドショックもあった。コロナの影響で自宅需要が急増し、木材が品薄になることで価格高騰を招いた。需要の急増と供給不足、それに加えてロックダウンのような労働時間の低下は、輸送費の高騰も招いている。こうして、国際的なコンテナ船の輸送費は以前の数倍になっている。
世界の生産が不安定になると、緻密に組まれたサプライチェーンへのインパクトは大きい。代替への切り替えも一定の時間とコストがかかることになる。今のサプライチェーンは市場が機能することを前提としているが、今はその状況にないということだろう。
これに加えて、ロシアのウクライナ侵攻である。経済制裁を科すものの、武力での対抗がないことは、世界中で紛争の火種になり得る。例えば、中国の台湾侵攻などがあっても誰も手出しができないことを予見させてしまった。もはや世界は平時の安定感を失い、有事のコストを支払わなければならなくなっている。日常生活においても、ガソリン・灯油・ガスなどのエネルギー価格の高騰や食料品などの値上げラッシュは、コストプッシュインフレとして既に顕在化している。
これからも、原材料や製品の需給バランスの崩れや価格の高騰はあると想定したほうがいいだろう。過去にも、こうしたリスクが常に小さなものから大きなものまであり、人間が解決に奔走することでその損害を最小限に抑えてきたのだと思う。
私も「こういったリスクや市場の問題は一時的で、すぐに回復するものだ」と思っていた。しかし、これだけ頻出すると、企業努力という善意にばかり頼ってはいられなくなる。
新築住宅価格の高騰が
止まらない理由
そうした中で、新築マンション価格や新築分譲戸建て価格は値上がりを続けている。