「ロシアのウクライナ侵攻は、米国がトランプ大統領のままなら、起こらなかった」という論調が一部にある。トランプ氏なら、プーチン大統領のスタンドプレーに噛み付き、「アメリカも軍を送る」などと脅せたはずだ、というのがその根拠だ。他方、トランプ政権が誕生した当初、米国とロシアが接近し、世界の資源地図が大きく塗り替わる可能性が指摘されていた。OPEC(石油輸出国機構)を“共通の敵”と見なす点で、トランプ氏とプーチン氏は「相思相愛」だったのだ。2017年1月当時の「エネルギーで米国とロシアが協調」を再録する。
トランプ氏とプーチン氏は「相思相愛」!?
石油の覇権をOPEC(石油輸出国機構)から奪ってやる──。資源大国のロシアに接近する意思を隠そうともしないトランプ米大統領の頭の中には、そんな野心があるのかもしれない。確かに、米ロが連携すれば、両国へと支配権が大きくシフトする可能性は高い。
この点について両国は相思相愛とみられる。
ロシア情勢に詳しい未来工学研究所の小泉悠客員研究員は「ロシアは米国と協調して、原油の価格決定権をOPECから奪うことを考えているのではないか」と分析している。
ロシアの原油生産量は世界2位。米国も「シェール革命」によって2012年から原油生産量が急増、一気に世界1位の資源大国へと躍り出た。両国が組めば、原油生産量シェアで約25%を握る一大勢力となれるのだ。加えて、両国は天然ガスの生産量も世界有数だ。
OPECから米ロへのシフトが起こる最大のトリガーは、米国が現在ロシアに対して科している経済制裁の緩和だ。