【ロシアの歴史と国民性】GDPは韓国並み、経済ジリ貧でも軍事超大国の理由Photo:123RF

GDPは韓国並み。経済もジリ貧。にもかかわらず軍事超大国としての存在感を強めるロシア。プーチン大統領が発揮する力の源泉は、世界最大の核戦力を背景とした強権的外交にある。なぜロシア人は領土に対する強いこだわりを持つのか。なぜ強いリーダーを好むのか。

「週刊ダイヤモンド」2017年1月28日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

世界最大の核戦力を背景とした強権的外交

  彼のつぶやきは、ソ連崩壊後の約25年間で最悪の状態に陥っていた、米ロ関係の雪解けを思わせるには十分だった。

 最高権力者の座に就く直前の2017年1月7日、「私が大統領になれば、ロシアは私たちへの尊敬を強くして、協力して世界の問題を解決できる」。米国のトランプ大統領はツイッターにそう書き込んだ。

 14年のクリミア半島の武力併合後、国際社会からの孤立を深めていたロシアを取り巻く環境は、対ロ協調路線にかじを切るとみられるトランプ政権の誕生で大きく変わり、ロシアはわが世の春を迎えることになりそうだ。

 しかしそれは同時に、世界史を塗り替える事態を引き起こすリスクをもはらんでいる。

 ロシアの名目GDP(国内総生産)は世界12位で、韓国と同程度の経済力しかない。クリミアの強引な併合に伴う制裁で経済もジリ貧だ。にもかかわらず、ここ数年、権謀術数が渦巻く国際政治の舞台でプーチン大統領が発揮するパワーは超大国のそれだった。

 例えば、米国に代わって内戦が続くシリアの停戦合意を主導、中東での指導力をにわかに強めている。その一方、欧州ではロシア国境へと勢力を広げる西側の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)に対抗するため、自国の飛び地カリーニングラードに核弾頭を搭載可能な弾道ミサイルを配備して、欧州諸国を激しく揺さぶった。

 力の源泉は世界最大の核戦力を背景とした強権的外交にある。米ロ協調が実現すれば、プーチン大統領はその中央集権的な独裁色を濃くし、さらなる「横暴」を世界に振りまくことになろう。

 ロシアにはそんな「力」を許容する土壌がある。