欧州戦争で世界は「ブロック化」へ、迫り来るスタグフレーションの恐怖Photo:PIXTA

欧米諸国とロシアの分断=ブロック化によって、人々は欲しいものを自由に買うことが難しくなる。供給制約で、モノの値段は上がり、コストアップで企業の効率性は低下、景気が減速する国は増える。物価が上昇すると、景気が下落しても、金融政策にできることは限られる。世界は物価上昇と同時に、景気が下落する、「スタグフレーション」に追い込まれる可能性がある。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

欧米諸国とロシアが分断され
欲しいものを自由に買えなくなる

 今なお、ウクライナでは激しい戦闘が続いている。米欧によるロシアへの厳しい制裁によって、世界のサプライチェーンのいろいろなところに供給制約=ボトルネックが発生している。それに伴い、原油、穀物、希少金属、木材など多くのモノの価格が急騰している。

 ウクライナ問題が世界経済に及ぼす重要な変化は、世界中から欲しい物を買えるグローバル化の流れが、欲しいものを買いにくい「ブロック化」へ変わり始めていることだ。

 欧米諸国とロシアが分断されること=ブロック化によって、世界の人々は欲しいものを自由に買うことが難しくなる。供給が制約されることで、世界全体でモノの値段は上がりやすくなる。特に、ロシア産が高い割合を占めるエネルギーや希少金属などの価格が上昇しやすくなる。コストアップによって企業の効率性は低下し、景気が減速する国は増える。

 もう一つ見逃せないのは、物価の上昇によって、今までのような金融緩和を継続できなくなることだ。そうなると、景気が下落しても、金融政策にできることは限られる。ウクライナ問題の今後の展開によっては、物価が上昇すると同時に、景気が下落する、「スタグフレーション」と呼ばれる厳しい状況に追い込まれる可能性がある。