自分のキャリアを生かして最後は校長に
『坂の上の雲』秋山好古のような生き方を

「校長先生には、モチベーションが高く、クリティカルシンキングができる人を採用しなければならないと思います」(石黒)
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石黒 日本の教育は中央集権的で、全国均一ですが、それを変えると質のばらつきが出ますよね。だからこそ校長先生には、とてもモチベーションが高くて、クリティカルシンキングできる人を採用しなければならないと思います。校長先生の役職がそれだけ魅力的であれば、そんな人も来ると思いますけど、応募するにふさわしい職業でしょうか?

藤原 大阪市であれば、小中学校の校長は年収7~800万円なんです。企業でバリバリ働く40代なら年収1500万円くらいあるでしょうから、半減してしまうと思います。それでも3~5年間、自分のマネジメント力を試したければ、人事権、予算権のないなかで“職人”を従える経験は、究極の自分研修になります。35~55歳くらいの間、3~5年やってみたらどこでも通用するマネジャーになれることが分かる人は、入ってくると思いますよ。

石黒 ティーチ・フォー・アメリカみたいに、経験が生きるということですね。ただ、校長先生をやった人材についても、雇用の流動性がないと、なかなか難しいですよね。

藤原 出口の話はとても大事だと思います。だから、大阪市の小中学校で行った公募50人についても、最初の5人がすごく大事だと言っています。経歴を見たときに、なんじゃこれ?って周りが思ったら翌年から誰も応募しないですよ。

 司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』、日本人は好きですよね。主人公である秋山真之は連合艦隊参謀ながら49歳で亡くなっているんですが、一方、兄の秋山好古は長生きして、陸軍大将になり、元帥に推挙されたのを断って軍を退役し、故郷に帰って中学校の校長になったんです。かっこいいんですよ。当時の志士たちには、退役して学校の校長になったり、学校をつくった人たちがいたんです。ところが今の産業界の重鎮の人たちは、教育問題についていろいろ「べき論」を言うだけで、自分ではやらないの。

 今回の大阪市の募集って、35歳以上で62歳まで応募できるんです。60歳までビジネスでバリバリやって、自分がお世話になった故郷の小中学校の校長になる。自分が作り上げたネットワークを全部つなぎかえてから死ぬってかっこいいでしょ。日本人の多くがそういうライフスタイルになれば、日本社会は変わると思います。

 もちろんお金が多少あるなら、寄付とかしてもらいたいですね。7億円あると体育館建ちますよ。どうですか、石黒記念講堂。1500万円なら図書館とコンピュータルームを一緒にした石黒記念メディアセンターとか。300万円なら石黒文庫、30億円なら校舎全体建て替えられますよ。

石黒 文庫がせいぜいかも(笑)。でも、スタンフォード大学なんで、まさにそんな感じです。ビル・ゲイツやヒューレット・パッカードの寄付で建てられた校舎には、その名前がついています。アメリカは、有名大学は多くが寄付で成り立っていますし、公立さえも寄付への依存度は高いです。