「グローバル人材」と聞くと、「英語が話せる人、欧米で通用するビジネスができる人」というイメージを持っていないだろうか。確かに公用語人口としては英語が世界一ではあるが、英語を母語としている人は世界中でもわずか5%ほど。しかも今やグローバルマーケットは欧米だけではなく、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど世界中に広がっている。では、これほどまで世界がつながりはじめた今、あらゆる場所で活躍できる“真のグローバル人材”となるにはどのような条件が必要なのか。国際連合の専門機関である国際労働機関(ILO)のジュネーブ本部多国籍企業局シニア・スペシャリストとして活躍をする荒井由希子さんに話を聞いた。
欧米式英語は世界で通用しない!?
“真のグローバルイングリッシュ”とは
石黒 前編で荒井さんがおっしゃっていたように、私たち日本人が考えるグローバル人材は、英語が話せて、日本の習慣にとらわれずに主に“欧米”で会議やビジネスがきちんとできる人…というイメージですよね。でも、それはあくまで日本を起点として考えているグローバル人材に過ぎません。国という枠組みを超えたグローバルな世界機関で活躍できるようなグローバル人材ってどんな人だと思いますか?
国際労働機関(ILO)ジュネーブ本部 多国籍企業局 シニア・スペシャリスト 東京都出身。慶應義塾大学卒業。1996年、ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)入学、メキシコ教育省研究員や、米州開発銀行にてリサーチアシスタントとして勤務し卒業。1998年、世界銀行ラテンアメリカ・カリブ海地域局人間開発部教育セクターに入行し、中南米の大規模教育融資プロジェクト・調査に携わる。2001年、国際労働機関(ILO)にヤングプロフェショナルとして入り、ジュネーブ本部児童労働撲滅国際計画に配属。2002年には、ILOアジア太平洋総局バンコク事務所に異動、貧困削減及び児童労働の専門家として配属され、2003年に同局付、貧困削減アナリストに。2006年、ILOジュネーブ本部、多国籍企業局へ異動。以来、シニア・スペシャリストとしてカントリープログラムをリード・統括し、グローバルサプライチェーン、及び多国籍企業進出先における雇用・労働問題に携わる。
Photo by Toshiaki Usami
荒井 欧米は地球上の半分にも満たない世界に過ぎません。石黒さんがおっしゃるように、日本でいうグローバル人材はいかに欧米社会とやり取りができ、活躍できる人材かという議論に近いような気がしますが、実はグローバルって、もっと楽なんじゃないかと私は思っています。
それぞれの国はみんな違うわけですよね。そうした中で柔軟性を持って、その相手や相手の文化に適応して、その相手国やその国の問題を自分のものとして受け止め、One of them、つまり当事者の1人として一緒にものを解決していくことが重要だと思います。また、相手国からは、自分をOne of usとして受け入れてもらうこともキーポイントになります。
日本の英語教育では欧米的な発音を追求しますけど、実は国によっては欧米的な英語だと通じにくいこともあります。アジアやアフリカでも英語が母国語の国もありますが、世界では母国語が英語である人の方が圧倒的に少ない。そうしたなかで、きれいな英語で話してもわかってもらえないことも多いので、私はあえて語順を変えてみたり、ブロークンイングリッシュで話すことがあります。発音も相手に合せてみたりしますよ。
言語は伝えるものではなく、わかってもらうためのツールじゃないですか。だから、肝心なのはコミュニケーションがとれることなのですよ。日本の方は、よく一生懸命きれいに話して文法を気にするけれど、お互い英語が母国語同士じゃないならば、シンプル・クリアな英語で、相手に合せることが重要です。日本の方も英語を勉強するにあたって、欧米式の英語だけではなく、“グローバルイングリッシュ”を身に付けることが大切ではないでしょうか。