いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。
ロジカルに推測する
今回のテーマは「ロジカルに推測する」です。
お題は何でもよいのですが、たとえば「日本に美容師が何人いるのか」を推測してみましょう。調べればわかることですが、自分の頭でロジカルに考えて導き出してみてください。
私がまず考えたのは、美容師の平均的な収入です。もちろん高い人も低い人もいると思いますが、月収30万円程度ではないかと考えました。一方、美容室の顧客の平均単価は、だいたい5000円くらいでしょうか。
これだけで計算すると、1カ月に1人が担当する顧客は「30万円÷5000円=60人」ということになりますが、60人だけだと自分の給料分しか稼げません。実際には美容室にはアシスタントや受付担当のスタッフもいますから、だいたい自分の給料の3倍程度は稼ぐ必要があるでしょう。つまり月180人を担当する必要があるということです。
では、美容室に行く人はどれくらいかというと、日本の人口が1億2000万人、そのうち赤ちゃんなど美容室に行かない人を差し引くとして、ざっと1億人が月に一度くらい美容室に行くと考えられます。「1億人÷180人」を計算すると、だいたい美容師の数は55万5000人と推測できます。
ちなみに、Googleで「美容師の数」と検索して上位に出てきた記事によれば、全国の美容師の数は「53万3814人」だそうです。
なお、これは結果が合っているかどうかが重要なのではありません。
最初から「どうせわからない」と諦めたりGoogleで検索して調べたりするのではなく、自分でロジックを考えることが大切です。そして、結果が違っていたら「自分のロジックのどこが間違っていたか」を考える訓練を積むことで推測する力が高まります。
ロジカルに推測する力がつくと、たとえば「ニトリは国内であと何店舗出店できるのか」といったことも自分の頭で考えて何らかの答えを導き出せるようになります。そして「ニトリがこれ以上出店できないとすれば、ニトリの戦略は今後どうなるのか?」と思考を巡らせられるようにもなるでしょう。
ニトリについて推測すれば、島忠を傘下に収めたのは、それまでニトリが扱っていなかったジャンルの日用品などをそろえた小規模店舗も展開することで、1店舗あたりの商圏を小さくできるからでしょう。家具ばかり扱っていれば同じ人が頻繁に店舗に来ることは期待できませんが、日用品を扱うことで来店頻度アップを狙えます。たとえば文房具を買いに来た人が「この寝具はよさそうだからこれも買っておこう」と思うかもしれません。
ロジカルな推測力は投資対象を選ぶときに役立つのはもちろん、社会人にとって仕事や人生のあらゆる場面で使える武器になります。
東大金融研究会のメンバーにこうした問いを投げると、最初はなかなか対応できない人が多いのですが、訓練すれば誰でもできるようになるものです。
偏差値や地頭は関係ありません。
必要なのは、与えられた情報を鵜呑みにせず、常に自らの頭を捻るという心構えです。
ぜひ、「自分の頭で考える習慣」を身につけてください。
(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)