ニュースで見聞きした国、オリンピックやW杯に出場した国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。大人の教養として世界の国々を知ろうと思った時におすすめ1冊が、新刊『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)だ。世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

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世界最大の国土面積

 ロシアは世界の陸地面積の8分の1を占め、東西1万1000kmに及ぶ広大な国土をもつ連邦国です。アジア、ヨーロッパ、さらにベーリング海峡を経て北アメリカへつながる位置にあります。

 地形は全体的に古い地質時代に形成された卓状地と呼ばれる安定大陸からなっていて、南部の中央アジアや東端のカムチャツカ半島は、火山や地震の活動が活発な地域です。

 ロシアをヨーロッパ側とアジア側との東西に二分するときは、概ね東経60度の経線に沿って南北に走るウラル山脈がその境となります。

 ウラル山脈は2億8000万年前にできた古いなだらかな山脈で、その西側には広大なヨーロッパ平原が広がります。

 そこはヨーロッパロシアと呼ばれ、首都モスクワをはじめ大都市が多く分布し、人口密度も高く、産業も集積しています。

 また気候を見ると、北極圏から、永久凍土のあるツンドラ地帯、タイガなどの森林地帯、砂漠に近い乾燥地帯と、概ね緯度にしたがって多様な自然が見られます。

ソビエト連邦からロシアへ

 15世紀末に成立したモスクワ公国が発展し、18世紀に成立したロシア帝国が国土を極東まで拡大させました。

 20世紀に入ってロシア革命が起こり、世界初の社会主義国家であるソビエト社会主義共和国連邦が成立しました。

 現在のロシアの前身となるソ連は、第二次世界大戦を経て、重工業化や農業の集団化とともに核開発や宇宙開発などを進め、アメリカ合衆国と並ぶ世界の超大国になっていきます。

 同時に、東西冷戦の東側の拠点にもなりました。

 やがて、1980年代になるとソ連経済が行き詰まり、社会主義経済の停滞を打破するためにペレストロイカと呼ばれた改革が始まります。

 しかし、この改革によって自由化や民主化が進む一方で、ソ連経済は混乱します。連邦を構成していた国々が独立する中、1991年にソ連は崩壊し、旧ソ連の国々はロシアを中心とするCIS(独立国家共同体)を結成しました。

CIS(独立国家共同体)

旧ソ連の構成国で形成された国家連合。ソ連崩壊と同時に結成された。2022年2月時点での加盟国は、アゼルバイジャン、アルメニア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ベラルーシ、モルドバ、ロシア。準加盟国はトルクメニスタン。加盟国の中心であるロシアはCISの結束を強化したい意向だが、各国の利害が一致せず、形骸化の傾向にある。

 市場経済への移行とともに集団農場は組合化や会社化され、国営企業は民営化され、新規の民間企業も設立されます。

 2000年代以降、「強いロシアの復活」を掲げる政権が国内外に強権的な姿勢をとるようになりました。

多民族大国としてのロシア

 人口の約8割はロシア人ですが、南部にはトルコ系やカフカス系、東部にはモンゴル系など多数の少数民族も暮らしています。

 旧ソ連に所属していた国や地域での民族問題が深刻で、北カフカスの自治共和国であるチェチェンの紛争や、旧ソ連に属していたジョージアやウクライナで起こっている紛争に軍事介入しています。

ロシア地図ロシア地図

石油、天然ガスなどの豊富な資源

 ロシアには多種類の鉱産資源が豊富にあります。旧ソ連時代には国内の資源産地を結びつけて工業地帯を形成しました。

 2000年代以降、石油や天然ガス等の輸出が経済を支え、また外国企業の進出等による先端産業や自動車産業の発展で、2010年代にはBRICsの一国といわれるようになりました。

 一方、農業については、寒冷や乾燥などで農地としては条件の厳しい土地が多く、国土のうち農用地の割合は1割あまりに過ぎませんが、適地の西部や南部を中心に、麦類、大豆、野菜、果実等で世界有数の生産をあげています。

 現在、企業による農場やダーチャと呼ばれる個人農園が営まれています。

ロシア連邦

面積:1709.8万㎢ 首都:モスクワ

人口:1億4232.1万 通貨:ルーブル

言語:ロシア語(公用語)

宗教:キリスト教58.4%(主にロシア正教)

隣接:ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ベラルーシ、ウクライナ、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタン、中国、モンゴル、北朝鮮

(注)『2022 データブックオブ・ザ・ワールド』(二宮書店)、CIAのThe World Factbook(2022年2月時点)を参照

(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)