『週刊ダイヤモンド』3月26日号の第1特集は「世界史・地理・民族・ニュース 地政学超入門」です。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、新・帝国主義時代を本格的に幕開けさせました。この混迷する局面を読み解く上で欠かせないのが地政学です。地政学の基礎知識を網羅し、さらに池上彰氏の特別講義や安倍晋三元首相と河野太郎氏の独占インタビュー、『サピエンス全史』著者のハラリ氏の寄稿も掲載。多方面からロシアの暴挙と世界の行方を読み解きました。
なぜ起こった、いつまで続く
ウクライナ危機を地政学で解く
戦車の砲撃で崩れるビル。迫撃砲で吹き飛ばされ、絶命する親子。2月24日に始まったロシアによる隣国ウクライナへの軍事侵攻はすでに1400人を超える民間人の犠牲者を生み、さらに混迷が続いている。

21世紀の現代において、今回のような武力による他国への侵攻が起こるとは、多くの人が予想し得なかった。現代の戦争の在り方は、サイバー攻撃や情報工作、ハイテク技術競争など「硝煙なき戦い」だという言説が少なくなかった。
いったいこの予想外の事態は、なぜ起こったのか。ウクライナはいつ平和を取り戻せるのか。同じような武力による侵攻は、世界の他の地域でも起こるのか――。容易には答えを出せないこれらの問を考える上で、「地政学」の考え方が役に立つ。
地政学は英国の地理学者、マッキンダー(1861~1947年)や米国の海軍士官、マハン(1840~1914年)が理論化した。地理的条件が、政治や軍事における各国の行動を左右するとみる思考体系だ。
この地政学の基本的な考え方に、ランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)という、分かりやすい二分法がある。