食料備蓄の水準は世界全体でみると、心地良いレベルにみえるかもしれない。だが、現実にはウクライナでの戦争を受けた穀物不足に対処できる備えがあるのは、一握りの政府に限られる。国連食糧農業機関(FAO)の分析によると、小麦やトウモロコシといった重要な穀物の世界の在庫利用比率(年間需要に対する在庫の比率を示す指標)は、年末時点で29%になる見通しだ。これは新型コロナウイルス禍前よりも低いが、そこまで懸念すべき水準ではない。しかし、その数字は実態を正確には表していない。在庫の大部分はごく少数の国が握っているためだ。米農務省(USDA)の推定では、中国は世界の小麦備蓄の半分、トウモロコシの約7割を占めている。記録的な豊作が5回続いたインドも、世界の小麦備蓄の約1割を握る。米国は小麦が世界全体の6%、トウモロコシが12%だ。とりわけ黒海地域からの穀物輸入に依存している北アフリカ諸国全体では、世界の小麦備蓄の約5%を保有する。
食料備蓄に国別格差、インフレ抑制に影響も
穀物在庫が多く、食料価格高騰を抑えられるのは中国など一部
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