仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手…。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。
本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』から今回は特別に、一部内容を抜粋、編集して紹介する。
発言のしやすさは「周りとの関係性」で決まる
本当は言いたいことがあるのに、なかなか意見を言えない人がいます。
「意見を言ったらみんなに反対されそう」「場の空気を壊してしまいそう」などと考えて、言葉を飲み込んでしまうのです。
会議では、黙っているうちに話がどんどん進んでいき、言いたいことを言えないまま、話し合いが終わってしまいます。
ほかの人が活発に意見交換している様子を見て、「自分だけ意見を言えなかった」などと感じ、自分を責めてしまうこともあります。
意見の言いやすさは、周りの人との関係性で決まります。
みなさんも、クラス、部活動やサークル活動などいろいろな場に参加して、話しやすい場と、そうではない場があったという経験があると思います。
職場も、年齢に関係なく気さくに発言できるフランクな職場もあれば、ある程度のキャリアにならなければ発言しにくい職場もあります。
「意見を言うのが苦手」だとしても、それは自分のせいだけではなく、環境との相性が悪いのかもしれません。うまく発言できない自分を責める必要はありません。
なかなか意見を言えない人、場に合わせて意見を調整するのが苦手な人は、まずは発言しやすい場所で、話しやすい相手に意見を伝えることから始めてみてはいかがでしょうか。
(本原稿は、本田秀夫著『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』より一部抜粋・改変したものです)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より、同子どものこころの発達医学教室教授。発達障害に関する学術論文多数。英国で発行されている自閉症の学術専門誌『Autism』の編集委員。日本自閉症スペクトラム学会会長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。2019年、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)に出演し、話題に。著書に『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』(ダイヤモンド社)、『自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体』『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『最新図解 女性の発達障害サポートブック』(ナツメ社)などがある。