仕事、人間関係…周囲に気を使いながらがんばっているのに、なかなかうまくいかず、心をすり減らしている人も多いのではないだろうか。注意しているのに何度も同じミスをしてしまう、上司や同僚といつも折り合いが悪い、片付けが極端に苦手…。こうした生きづらさを抱えている人の中には、「能力が劣っているとか、怠けているわけではなく、本人の『特性』が原因の人もいる」と精神科医の本田秀夫氏は語る。
本田氏は、「生きづらさを感じている人は『苦手を克服する』ことよりも、『生きやすくなる方法をとる』ほうが、かえってうまくいくことも多い」と言う。
2021年9月に、本田氏が精神科医として30年以上のキャリアを通して見つめてきた「生きづらい人が自分らしくラクに生きられる方法」についてまとめた書籍、『「しなくていいこと」を決めると、人生が一気にラクになる』が発売となった。今回は特別に本書の中から、一部内容を抜粋、編集して紹介する。
「自律スキル」と「ソーシャルスキル」が鍵
仕事の悩みには、ミスが多い、片付けができない、スケジュール管理が苦手といった実務的なこともあれば、「仕事をがんばりすぎる」「失敗を引きずってしまう」というような働き方やメンタル面での悩みもあります。
仕事は基本的には「しなければいけないこと」ですが、じつはそのなかに「しなくていいこと」がけっこうふくまれています。
仕事で「しなくていいこと」を考えるときのポイントは、自分に「できること」「できないこと」を理解して、できないことは無理せず、手放していくことです。
それが仕事全般に通じる基本姿勢になります。
① 自分にできることを理解して、それを通じて他者に貢献する
② 自分にできないことも理解して、周りの人の協力を得ながら対応する
この2つの基本を心がけると、自分らしく、無理なく働けるようになり、仕事の悩みは減っていきます。
私は、このスタイルを確立するためには2つのスキルが必要だと考えています。
それは、「自律スキル」と「ソーシャルスキル」です。
<自律スキル>
自律スキルは、自分で自分をコントロールするスキルです。
自分にできること、できないことを理解して、できることには自信を持って取り組みます。そして、できないことには人の力を借ります。自分ができることを知っていて、自己肯定的だからこそ、苦手なことは苦手だと言える。できないことを人に伝えることを悪びれない。そのようなスキルを身につけると、自分の能力を仕事でしっかりと発揮できるようになります。
自律スキルを高めるには、自分の得意不得意をよく理解しておくといいでしょう。
「できないことをできない」と周りに伝えること、それによって「周りから協力を得られた」「疲れにくくなった」などの成功体験を積み重ねていくことで、自己肯定感が高まります。
<ソーシャルスキル>
ソーシャルスキルは、「社会性」に関するスキルです。
「社会性」と言うと、集団のなかでうまく立ち回ることを想像するかもしれませんが、ここで言う社会性は「ルールを守れること」と「ほかの人に相談できること」です。
なんでも人に合わせるのではなく、自分らしいやり方を貫きながら、集団のルールを守る。ルールを守って活動するなかで、困ったら人に相談する。そのようなスキルを身につけると、人に振り回されて悩むことが減ります。