退去させられない! その理由は?

 びっくりしたジョンは私に相談してきました。

 定期借家契約をする際には、建物の賃貸人は、あらかじめ建物の賃借人に対し、「建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了する」という旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。

 しかし、その書面の交付をしていないことが判明したんです。

 ジョンは慌てて当時の媒介業者に連絡しましたが、すでに倒産していて連絡がつきませんでした。

 通常、定期借家契約をする時というのは、大家であるジョンが直接書面を交付するというより、媒介業者にそれを委任して媒介業者にやってもらうことが多いです。

 しかし、このケースでは両者そのことを忘れていたようで、マイケルに契約当時書面を交付していなかったのです。

 この場合、普通借家契約とみなされてしまいます。つまり、退去させられないのです。

 焦ったジョンは、何度もマイケルと話し合いを重ねて交渉し、結果としてマイケルは「じゃあ立退料288万円払ってくれるなら出てやるよ」ということになり、ジョンは仕方なく288万円をマイケルに支払いました。

 さて、これで終わりではありません。この後、なんとジョンが売買の媒介業者である私を訴えてきたのです。

「お前が媒介業者として、ちゃんと確認して事前に説明していればこんなことにはならなかったんだから、俺が払った288万円を損害賠償しろ」

 ここで問題です。私はジョンに損害賠償をしなければならないでしょうか?