何かを信じるのは、万人に与えられた権利

平尾 面白いですね。

――なぜ、そこまで信じることができるのですか?

鶴岡 何かを信じるって、今日からできることじゃないですか。ぶっちゃけ誰でもできるというか、全員に与えられた共通の権利ですよね。

でも、意外とみんなできないんだなと社会に出てから思いました。基本的には、もっと短期的なインセンティブに揺さぶられることが多い。あとは、数ヵ月チャレンジしてダメだったら信じるものを変えるとか。信じるものがすぐ崩壊しちゃう。

平尾 すぐ変えてしまいますよね。

鶴岡 何かをずっと強く長期で信じるのは実は難しいということに起業してから気がついて、「じゃあ僕はここに張ろう」って思ったんです。それこそ「別解力」に近いと思います。

そんなすぐに世の中は変わらないし、成果も出ない。

みんな自分に対する期待値が高すぎると思うんですけど、僕は自分への期待値がすごく低かったのが良かったと思いました。結果が出なくても焦らなかったんですね。

来月の最適化であれば「100億円の売上がある一社」と契約すればいい。でも、それってショートタームじゃないですか。インターネットとかロングテールの可能性を信じられると、「10万円×10万人」の方がマーケットが大きいと思うわけです。来月だったら前者の方がいいけれど、10年後だったら絶対後者の方が多いよねと。

どっちを選ぶか、ぶっちゃけ正解はないと思うんです。ただ、どっちかをずっと信じないとプロダクトが揺れてしまう。

だからこそ、信じるものはずっとぶれないようにしていますね。

平尾 鶴岡社長の問題発見力がすごく高いと思いました。確実に来るところに、ずっと勝つまで張っているという。大きいビジョンを持っていらっしゃるんですよね。

自分への期待値が低い人ほど、長期的に成功できる理由平尾 丈(ひらお・じょう)
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。