部下や取引先との人間関係にも
想像力は欠かせない
私が経営者になる人にぜひ身に付けてほしい50の行動習慣について解説した『社長の成功習慣』(ダイヤモンド社刊)に、アートにはビジネスパーソンとしての成長を促す力があると書きました。アートを通じて美的感覚を磨くことで、「真なるもの」「善なるもの」を直感的に見分ける能力が高まり、「想像力」と「大局と細部を見る力」を養う効用も得られます。
小宮コンサルタンツ代表
この本では、経営者が経営力を高めるための想像力を養うために、絵画を見て、「この絵には何が描かれているのか」「作者は何を表現したいのか」、さらには、「この先、この絵の場面はどう展開していくのか」ということなどを想像する方法を紹介しました。
想像力はある意味「論理的思考力」にも大きく関係しますから、将来を想像しての戦略や戦術策定などにも欠かせないものです。さらに、想像力は部下や取引相手などとの人間関係を円滑にする上でも必要なものです。
儒教の「五常」(人が常に守るべき仁・義・礼・智・信の五つの徳目)の中に、最高の徳目とされる「仁」があります。仁という漢字は、「人」に「二」と書きます。人が二人いると必要になることは、一つはリーダーシップであり、一つは相手に対する思いやりであると、私は解釈しています。
思いやりとは、相手はどう思うかを想像し、いたわりの気持ちを持つこと。簡単そうに思えるかもしれませんが、自分を起点にして自分のことばかり考えている人には、相手のことは分かりません。発想の起点を自分から相手に変えて考えない限り、本当の意味での思いやりは持てないのです。
私が新入社員研修で講演する時は、もっとかみ砕いて、「幸せになれる人は相手の立場に立てる人」「人の気持ちが分かる人」という話をします。