「渋谷教育学園」同時交代!私立中高一貫校注目の校長人事【2023年入試版】渋谷教育学園の幕張(左)と渋谷(右)で、同時に父から子へ校長の交代が行われた

新年度が始まる4月。2022年も首都圏私立中高一貫校の新校長について、2回に分けてご紹介する。まずは、オーナー系の学校と大学の系列校を中心に見ていこう。世襲もあれば生え抜き教員の昇格もある。その学校のこれからの姿を示すことになる新しい校長がどのような人か注目しておきたい。今年は数学の先生が目に付く傾向にあるようだ。(ダイヤモンド社教育情報)

オーナー系学校の対照的な人事

 いまや、首都圏の共学中高一貫校の雄となった学校法人渋谷教育学園。高校の新設から立ち上がった幕張(1983年)、女子校を共学化した渋谷(1996年)ともに、理事長・校長を当初から務めてきた田村哲夫氏が、ついに両校の校長職から退いた。いずれも、副校長を長らく務めていた二人の子息につないでいる。親子間での学校承継が円滑に進んだ、最近では数少ない例といえる。

 幕張は、父と同じく銀行員から転じた田村聡明氏が就任した。渋谷も、1996年以来、同校で副校長を務めていた高際伊都子氏が就いた。高際氏は、慶應義塾大学理工学部数理科学科を卒業後、母校の東洋英和女学院中学部・高等部で数学科教員を務め、渋谷に移っている。

 入社4年で住友銀行のエリートコースを辞めて、家業である学校法人に転じて爾来(じらい)60年。1936年生まれで今年86歳になった田村理事長は、理事長と学園長を兼ねている。4月からも、学園の名物である校長講話を学園長講話と改めて続けており、意気軒高である。

 千葉私立御三家の市川もオーナー系である。理事長・学園長の古賀正一氏は、東芝副社長も務めた経営者で、父の後を継いだ。教育の現場は任せて、経営に徹している。前任の校長である宮崎章氏は筑波大学附属駒場から転じるなど、校長は外部招聘(しょうへい)が続いた。副校長から校長に昇格した及川秀二氏は、初めての教員からの生え抜きであり、男子校だった時代の卒業生でもある。

 いまでは数少なくなってきたオーナー系の学校としては他に、埼玉で人気上昇が顕著な大宮開成がある。新校長の松﨑慶喜氏は理事長の松﨑一洋氏と同様、創業家の出身である。

 関西では、東京大と京都大の合格実績で躍進した西大和学園の新校長に、教頭の飯田光政氏が就いている。母体の学校法人西大和学園は衆議院議員だった田野瀬良太郎氏が創立し、長男の太樹氏が学園の理事長、二男の太道氏が衆議院議員となっている。