お金があれば決して謝罪せずに済む、という言い回しがある。それは、カウンターオファー(対案)の屈辱を受け入れずに済む、という意味もあるようだ。イーロン・マスク氏が13日にツイッターのブレット・テイラー会長宛ての簡潔な書簡で提示した同社の買収案には、そうした考え方が反映されている。1株54.20ドルという提示額は、マスク氏が4月4日にツイッターへの関心を表明する前の同社株価の30日間平均を51%上回る水準だ。また、この金額は約1年前の同社株価を24%下回る水準でもあり、通常であれば最低限の提示額と見なすのが妥当だろう。しかし、世界一の富豪が相手であればそうはいかない。マスク氏は書簡の中で、この提示額について「最善かつ最終的」なものだとし、テキスト送信した音声メッセージの中で「私は真っすぐ最後まで進んだ」と述べた。また、提案が受け入れられなければ「株主としての立場を考え直す」必要があるとし、既に取得したツイッターの株式10%を手放すことを示唆した。つまり、アメとムチというわけだ。ツイッターの株価は、マスク氏が関与を表明したときの上昇分はやや戻しているが、それでも13日終値はそのときの水準を17%近く上回っている。
マスク氏買収案、ツイッター取締役会に逃げ道
提示額やタイミング、拘束力のなさは受託者責任と矛盾 拒否の口実に
有料会員限定
あなたにおすすめ