この景気循環は速い。米国の2020年のリセッション(景気後退)は、史上最も急激で最も短かった。回復のペースは1980年代以降で最も速い一方で、インフレ率は1970年代以降で最も急伸している。この非典型的なサイクルは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)とその後の経済再開による需要と供給の混乱、それに応じた異例の財政・金融刺激策が原因だ。次のフェーズも典型的でないことは、ほぼ間違いない。景気が突然減速し始める可能性があり、その理由は三つある。一つは、2020年と21年の両年は財政政策によって需要が押し上げられたことだ。コロナ対策給付金の支給や失業保険の増強、州や地方政府への財政援助、児童税額控除の拡大、返済免除条件付き事業融資などだ。そのほぼ全てが期限切れとなり、州レベルの減税策などいくつかの措置を除けば、新たな対策は採られていない。シンクタンクのブルッキングス研究所ハッチンス財政金融政策センターによると、2021年第1四半期のインフレ調整後の国内総生産(GDP)は、財政支援策が7.6ポイント寄与した。今年の第1四半期はGDPを2.1ポイント減じた。