なぜわずか1世紀で人の寿命は54年も延びたのか?Photo:123RF

 世界の中で日本は平均寿命が最も長く、84.3歳(2021年度版世界保健統計より)。なぜ、現在の私たちはこれほど長く生きられるようになったのか。その背景には「生命を守る」ことを追求してきた人たちがいた。この壮大なる歴史の物語を、米国の人気作家スティーブン・ジョンソンが紡いだのが、『EXTRA LIFE』だ。コロナの影響で世界の平均寿命が短くなったという報告が相次ぐ中、我々はこの「寿命の歴史」から何を学ぶべきなのか。本書を翻訳した、翻訳家の大田直子さんに「寿命の歴史物語」の重要性について解説してもらった。

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 2020年、新型コロナウイルスCOVID-19が世界をパンデミックに巻き込んだ。その混乱はいまだに収まっていない。

 ちょうど100年前にも、いわゆるスペイン風邪が世界中で猛威を振るい、死者は世界人口の5パーセント超に達したともいわれる。この狂暴なウイルスと世界大戦という人間の暴力が相まって、文明そのものが破滅するというシナリオもありえた。