アップルには問題があった。スマートフォンの「iPhone(アイフォーン)」が飛ぶように売れている一方で、パソコンの「Mac(マック)」は売り上げが伸び悩んでいた。顧客はその設計や性能に魅力を感じていなかった。5年後の現在、Macの売り上げは急増している。好転の要因は、世界で最も有名な電子機器メーカーの内部に、世界で最も先進的なチップ設計事業を構築するという、長年にわたる異例の取り組みにある。アップルの半導体部門は、インテルの元エンジニアでIBMの元幹部でもあるジョニー・スロウジ氏(57)の指揮の下、リスクの高いプロジェクトに着手した。15年にわたりアップルのノートブックやデスクトップパソコンに採用されてきたインテル製のプロセッサーを、内製チップ「M1」に置き換える取り組みだ。M1はインテル製のチップよりもはるかにエネルギー効率が良く、Macの高速化と発熱抑制を可能にし、アップルのパソコンライン復活の土台を築くことになった。サプライチェーンの混乱がチップ市場に混乱をもたらす中、アップルは今や重要な部品をコントロールできるようになった。