「競技」そのものを作れるのが
ビジネスの醍醐味
為末 自分のことに関して言えば、僕はスピードが物凄くあるわけではなかったんです。人間っていろいろで、速度が車のギアでいう「5速」くらいまであるとしたら、2速、3速の続く中距離選手もいれば、ボルトのように最高速が強い選手もいる。
僕は4速が得意で、人間は4速で35、6秒、距離にして300メートル走ることができるんです。だから300メートルハードルっていう競技を作りたいって思うんですよね(笑)。
陸上に関してはそれは不可能に近いですが、社会、ビジネスに関してはそれが可能だと思うんです。そもそも「競技を作る」ところから始めても良いような感じですよね。既存のルールに従うことはないんですから。
伊賀 自分の不得意なところで努力するよりは、得意なマーケットを創れないか、大きく出来ないかと考えることも、大アリだということですよね。
もう20年近く、日本の家電メーカーは超高画質で巨大なテレビを作ることにしのぎを削ってきましたが、海外メーカーはその競争に突っ込んでくるのをやめて、別の市場を創ろうとトライしてきました。今や、ここ数年の間に出てきたような商品が、テレビという市場自体を脅かす勢いです。
ここ最近、ビジネスの世界は本当に動きが早く、今から新しい市場を創っても10年後には主要市場に育てることができるでしょう。今後はますます「王道で勝負」を維持するだけじゃなく、柔軟に「勝てる市場を探す」ことが求められる時代になると思います。