一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、ビジネス、投資、資産形成、経済的自立のために知っておくべき教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに10000件以上の評価が集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』の刊行を記念して、その一部を特別に公開する。
いつまでも「幸せになれない人」の共通点
「動き続けるゴールポストを止める」。これほど重要なスキルはないだろう。努力をして結果を手にしても、それに合わせて求める基準を上げ続けるのなら、いつまでたってもさらなる結果を求め続けなければならない。「もっと多く」の金、権力、名声を手に入れたいという欲望にかられ、満足感よりも野心のほうが大きくなっていく。
これは危険な状態だ。1歩前進するごとに、ゴールポストが2歩前に動く。求めるものが、どんどん遠くに離れていく。結局それに追いつくには、大きなリスクを取るしかなくなってしまう。
現代の資本主義は2つのことに長けている。「富を生み出すこと」と「羨望を生み出すこと」だ。この2つは良い効果を生むこともある。ライバルに負けたくないという気持ちは、努力の燃料になるからだ。
だが、「十分」の感覚がなければ幸せは遠のく。古くから言われているように、幸福とは、「結果から期待値を差し引いたもの」なのだから。
(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』からの抜粋です)
ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフル」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。
米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。