一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、資産形成、経済的自立のために知っておくべきお金の教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに10000件以上の評価が集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』から、一部を特別に公開する。(初出:2022年2月21日)
なぜ平凡な清掃員の死が、国際的ニュースになったのか?
私の好きなウィキペディアの項目はこう始まる。
「ロナルド・ジェームズ・リードは、アメリカの慈善家、投資家、清掃員、ガソリンスタンド店員である」
リードはバーモント州の田舎で生まれた。家族で高校を卒業したのは、彼が初めてだった。家が貧しく交通費がなかったため、学校には毎日ヒッチハイクをして通っていたという。
周りの人は、リードについて特筆すべきことは何もないと口を揃えた。リードはガソリンスタンドで接客と自動車整備の仕事を25年間務め、その後は百貨店のJCペニーで清掃員として17年間パートタイムで働いた。
38歳のときに2LDKの家を1万2000ドルで購入し、生涯そこに住み続けた。50歳で妻を亡くしたが、再婚はしなかった。友人たちは、彼の一番の趣味は薪を割ることだったと回想している。
2014年に92歳で亡くなったとき、この田舎の地味な清掃員の死は、国際的なニュースになった。同じ年に他界したアメリカ人は281万3503人。そのうち死亡時に800万ドル以上の純資産を持っていたのは4000人にも満たない。リードは、そのうちの1人だった。