一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、ビジネス、投資、資産形成、経済的自立のために知っておくべき教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに10000件以上の評価が集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』の刊行を記念して、その一部を特別に公開する。

子どもの「金遣い」は親の収入で決まる。人の「お金の価値観」に影響を与える意外すぎる要因Photo: Adobe Stock

親、生まれた地域、職場……
「お金の価値観」に影響を与える意外な要因とは?

 人はそれぞれ違う。世代も違うし、親の収入や価値観も違う。世界のさまざまな地域、さまざまな経済圏に生まれ、インセンティブの異なる雇用市場で働き、さまざまな度合いの運を体験している。

 その結果、他人とは違う知識を持ち、違う考え方をしている。誰もが、自分なりの直接的な経験をもとに世界の仕組みや成り立ちを理解している。直接的な経験は、間接的な学びよりもはるかに説得力がある。

 だから、お金についての考え方も人それぞれだ(あなたや私を含む、全員がそうだ)。お金の扱い方、考え方は、ある人にとって相当おかしなことでも、別の人にとってはまったく理にかなっているということも十分に起こり得る。

 たとえば、貧しい家庭で育った人は、裕福な銀行員の家庭で育った人には想像もつかないような方法でリスクと報酬について考える。インフレ率が高い時代に育った人と、物価が安定している時期に育った人もその経験や考えはまったく異なる。

 1929年の世界大恐慌で全資産を失った株式仲買人と、1990年代後半のITバブルの栄光に浸る技術者を比べてもそうだろう。30年間不況を経験していないオーストラリア人も、アメリカ人とはまったく別の考えを持っている。

 こうした例は、いくらでも挙げられる。あなたは私が知らないお金の経験をしているし、私もあなたが知らないことを知っている。だから、あなたと私とでは、信念や人生の目的、将来の見通しが違うのだ。

(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』からの抜粋です)

モーガン・ハウセル

ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフル」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。
米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。