一冊の「お金」の本が世界的に注目を集めている。『The Psychology of Money(サイコロジー・オブ・マネー)』だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニストも務めた金融のプロが、ビジネス、投資、資産形成、そして人生に効く教訓を「人間心理」の側面から教える、これまでにない一冊である。世界43ヵ国で刊行され、世界的ベストセラーとなった本書には、「ここ数年で最高かつ、もっとも独創的なお金の本」と高評価が集まり、Amazon.comでもすでに10000件以上の評価が集まっている。本書の邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』の刊行を記念して、その一部を特別に公開する。
努力は必ず報われない。
でも、失敗も努力不足のせいではない。
会社が倒産したのは、努力が不足していたから?
投資が失敗したのは、十分に考えていなかったから?
仕事がうまくいかなかったのは、怠けていたから?
もちろん、それが当てはまる場合はある。だが、それが当てはまるのはどの程度だろうか? それを正確に知るのは至難の業だ。
何であれ、価値あるものを追い求めようとするとき100%成功するとは限らない。うまくいかずに、不運に見舞われることもある。成功した場合であれ、失敗した場合であれ、ある結果がどの程度意図した通りに現実化したものなのか、どれくらい偶然の要素が混じっていたのかを厳密に理解しようとすると、話があまりにも難しく、複雑になってしまう。
たとえば、買った株の価値が5年後に激減したとする。その株を買う判断自体が間違いだったのかもしれない。あるいは、儲かる確率が8割あったのに、たまたま不運な2割を引いてしまったのかもしれない。
どちらが真実なのかを、どうやって判断すればいいだろうか。自分の判断が間違っていたのか? それともリスクが現実化しただけなのか? それは誰にもわからない。
成功を過信しすぎるな。失敗を悲観しすぎるな
良い判断をしたものの、たまたま不運に見舞われて資産を失った投資家は、フォーブス誌の表紙を飾ったりしない。特に優れた判断をしたわけでもなく、ときに無謀な判断をしたにもかかわらず、たまたま幸運に恵まれて資産を築いた投資家は、当たり前のようにこのビジネス誌の表紙に登場する。
だが、この2種類の投資家は、同じコインの裏表に過ぎない。どちらに転んだかは、偶然による要素が大きいのである。
(本原稿は、モーガン・ハウセル著、児島修訳『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』からの抜粋です)
ベンチャーキャピタル「コラボレーティブ・ファンド社」のパートナー。投資アドバイスメディア「モトリーフル」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の元コラムニスト。
米国ビジネス編集者・ライター協会Best in Business賞を2度受賞、ニューヨーク・タイムズ紙Sidney賞受賞。妻、2人の子どもとシアトルに在住。