任天堂創業家ファンドの「横やり」で、東洋建設TOBは不成立の公算Photo:123RF

準大手ゼネコンの前田建設工業を傘下に持つインフロニア・ホールディングス(HD)が実施している、海洋土木の東洋建設への株式公開買い付け(TOB)が、不成立となる公算が高まった。任天堂創業一族の資産運用会社が26%超の株を取得し、インフロニアHDを上回る価格で買収提案までしているからだ。ただしインフロニアHDのTOBに賛同している東洋建設は資産運用会社側に反発しており、先行きは不透明だ。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

インフロニアHDとは元から提携関係
任天堂ファンドに反発、泥仕合の様相

 インフロニア・ホールディングス(HD)が3月22日に東洋建設の株式公開買い付けを表明してから、長らく600円を下回っていた東洋建設の株価は800円を超えた。インフロニアHDの買い取り額は1株当たり770円だ。インフロニアHDは傘下の前田建設工業を通じて東洋建設株を約20%保有し、もともと提携関係にあったが、TOBによって全株の取得を目指している。東洋建設もこのTOBに賛同を表明した。

 ところが、世界的なゲーム会社となった任天堂の創業一族の資産を運用するヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が東洋建設の株を約19%取得していると4月中旬に判明すると、さらに高騰。その後YFOは約26%まで買い進め、株価は25日に一時、980円を超えた。

 東洋建設はYFOの姿勢に反発しており、22日に彼らとの書簡のやり取りを自社のホームページで公開。YFO関係者に社内の情報が目的外利用された可能性があると批判するなど、泥仕合の様相を呈している。

 TOB期間は5月9日まで。突如として名乗りを上げたYFOの狙いと、インフロニアHD側の事情を踏まえ、先行きを分析する。