“脱請負”の旗手である前田建設工業のキーマンを直撃。因習に挑む課題と限界とは?特集『ゼネコン 地縁・血縁・腐れ縁』(全15回)の#7では、準大手ゼネコン各社の次の一手を検証する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
「請負と書いて、
“請け負け(うけまけ)”と読む」
建設会社は、お客から仕事を頂いてナンボ。工事を請け負うために、施主の言うことを何から何まで聞き入れ、奴隷のような扱いを甘受することもある。東京都心の大型ビルなどの建設工事なら、赤字覚悟で工事を獲得し、実際に大赤字を出しても、下請け業者をたたく(負担を押し付ける)などしてギリギリの収益を確保する。そうした慣行が今なおまかり通っている。
「請負と書いて、“請け負け(うけまけ)”と読む。施主にはどうしても逆らえない」とある大手ゼネコン幹部は愚痴をこぼす。
そんなゼネコン業界にあって「脱請負」の旗を掲げ注目を集めてきたのが、前田建設工業だ。10月に傘下の前田道路などと持ち株会社インフロニア・ホールディングス(HD)を発足させた。その初代社長に就いたのが、前田建設で長らく企画部門の幹部を務めてきた岐部一誠氏だ。
前田建設は従来、「受注時利益」を公表し、赤字を前提とした受注を回避してきた。導入時は、少しでも大きな工事を手掛けたいと考える建築部門などからの反発が厳しく「会社をクビになりそうになった」と岐部氏は笑う。自身も元々は土木の技術者で「許されるなら、いくらでもダムを造りたい。だが、経営は別だ」。
「脱請負」とは、自らが事業の主体になり、利益を出すことを意味する。この理想を実現するために乗り出したのがコンセッション事業だった。