NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。
週末「木工体験」で一つの作品を作り上げる
美意識を育てる四つ目の方法は、美しいものを創造することです。音楽をつくる、器をつくる、料理をつくる。つくることでものの理解も深まっていきます。
私が「GO ON」で一緒に活動している、中川木工芸という会社があります。中川木工芸は、滋賀県で伝統的な木桶を製造している工房です。現在は木桶の製作技法を用いて、おひつや寿司桶、シャンパーニュクーラーなど、美しい木製品を数多くつくられています。
その主宰・中川周士氏は、「職人」を体験するイベントを立ち上げています。
そこには日曜日になると東京など全国から様々な人々が来て、工房で木を削り、お皿や箸や桶などを一から制作していきます。
観光地で手軽に経験できる「木工体験」「焼き物体験」のようなものとは違います。参加する人々はもっと真剣です。毎週のように何度も通い、職人と同じように素材と向き合い、本格的に一つの作品をつくりあげていくのです。
参加者は、ふだん都会で働いている人が中心です。企業家や実業家の方も多く、女性も多いそうです。これは、自らの手を使って物をつくることで、つくる喜びを実感し、それを表現して生活の価値を高めようとする姿勢の表れではないでしょうか。